慢性活動性抗体関連型拒絶反応に伴って生じた、IgG陰性/IgM陽性の移植後新規膜性腎症の一例
IgM-positive, IgG-negative de novo membranous nephropathy accompanied with chronic active antibody-mediated rejection

東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科
* 勝馬 愛、小林 賛光、山本 泉、川邊 万佑子、山川 貴史、勝俣 陽貴、
眞船 華、中田 泰之、丹野 有道、山本 裕康、横尾 隆
東京女子医科大学 腎センター
堀田 茂

 症例は46歳男性。糖尿病性腎症を原疾患とする慢性腎不全により2009年6月に血液透析を経た後、2010年5月に実母をドナーとする血液型適合生体腎移植を施行した(退院時血清Cr 1.9mg/dl)。移植後3ヶ月、1年目のプロトコル腎生検では明らかな拒絶反応は認めなかったが、3年目のプロトコル腎生検で中等度以上の傍尿細管毛細血管炎(ptc 2-3)、C4d 陽性を認め、かつHLA-DR9、-DQ9に対する抗ドナー特異的抗体(DSA)を認めたことから、抗体関連型拒絶反応と診断した。ステロイドパルス療法500mg×3days、血漿交換療法、γグロブリン静注(IVIG)40g/body、Rituximab 200mg単回投与による治療を実施するも、治療6か月後の効果判定腎生検では、傍尿細管毛細血管炎(ptc2-3)の残存と移植糸球体症(cg1b)、DSA(抗DQ9抗体)がみられ、抗体関連型拒絶反応が遷延している状態であった。そこで追加治療としてIVIG40g/body、血漿交換療法を行ったが、治療1年後の腎生検では、引き続き移植糸球体症(cg2)、さらに傍尿細管毛細血管基底膜の多層化(7-8層)を伴う慢性活動性抗体関連型拒絶反応の所見であった。加えて、光学顕微鏡で糸球体係蹄にbubblingが新規に確認された。免疫染色では、蛍光抗体法、酵素抗体法ともにIgM、C4dが係蹄壁に顆粒状陽性を示す一方、IgG、IgA、C3c、C4、C1qは陰性であった。電子顕微鏡では糸球体係蹄の上皮下沈着は認めなかったが、内皮下から基底膜内にかけて、高電子密度物質や空洞性変化がみられ、bubblingの所見と合致していた。なお血清Cr値は1.7-1.9mg/dl、蛋白尿は陰性でsubclinicalな経過であった。抗体関連型拒絶反応に伴う移植後新規膜性腎症は、一般的にはIgG、C4dが係蹄壁に顆粒状陽性を示すが、IgG陰性でIgM、C4dが顆粒状陽性を示す症例は過去に報告がない。本症例における“膜性腎症” という診断の妥当性や膜性病変の成り立ちについて検討するうえで、非常に示唆に富む症例であり、若干の文献的考察を含めて考察する。

スライド

戻 る  ページの先頭