移植早期に再発した紫斑病性腎炎に対してステロイドパルスと塩化亜鉛鼻腔洗浄が奏功した1例

三重大学病院 腎臓内科
* 藤本 美香、溝口 翔子、小田 圭子、平林 陽介、春木 あゆみ、鈴木 康夫、伊藤 貴康、村田 智博、片山 鑑、石川 英二
三重大学病院 腎泌尿器外科
西川 晃平、杉村 芳樹

【症例】39歳男性

【現病歴】35歳時に紫斑と関節痛、浮腫を主訴に受診しCre3.1mg/dl、血尿3+、尿蛋白10g/gCreを認め腎生検で紫斑病性腎炎ISKDCXb+Y型と診断した。ステロイドパルス療法、エンドキサンパルス、血漿交換施行したが腎機能は悪化し、2ヶ月後に維持透析導入となった。38歳時に母親(62歳)をドナーとして生体腎移植術を施行した。
移植前に扁桃摘出術施行し、血液型不適合(B→A)、抗HLA抗体陰性、抗ドナー抗体は陰性であった。免疫抑制剤はタクロリムス(Tac)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、メチルプレドニゾロン(MP)、バシリキシマブ(BAX)、リツキシマブ(RIT)の5剤で導入した。0hr腎生検では持ち込み病変は認めず、術後経過は良好であり退院時Cre 1.99mg/dl、尿RBC1-4/HPF、尿蛋白0.05g/日であった。

【経過】移植後2ヶ月目 プロトコール生検時、Cre 1.66mg/dl、尿潜血陰性、尿蛋白0.32g/gCreであったが、光顕ではメサンギウム細胞増加と細胞性半月体形成を認め、蛍光抗体法ではIgA・C3がメサンギウム領域に沈着しており、紫斑病性腎炎の再発を認めた。
 移植後3ヶ月目 顕微的血尿を認め、MMFを1000mgから1500mgへ増量した。
 移植後5ヶ月目 Cre2.8mg/dl、尿RBC30-49/HPF、尿蛋白0.7g/gCreと腎機能・検尿所見悪化したためステロイドパルス療法を3クール施行した。
 移植後6ヶ月目 Cre3.15mg/dl、尿RBC>100/HPFとさらに悪化。慢性上咽頭炎所見があり、紫斑病性腎炎悪化との関連性も示唆されたため塩化亜鉛鼻腔洗浄を開始した。
 移植後9ヶ月目 Cre 1.85mg/dl、尿RBC5-9/HPF、尿蛋白0.3g/gCreまで改善した。
 移植後10ヶ月目 治療効果判定目的での移植腎生検ではメサンギウム細胞増加や管内増殖性変化は認めるも半月体形成は認めず紫斑病性腎炎の進行は認めなかった。

【考察】RPGNを呈したり壊死性血管炎を認めた紫斑病性腎炎は、腎移植後に再発しやすい。再発性腎炎に対して扁桃摘出術+ステロイドパルス療法が有効との報告もあるが、多くの場合治療に難渋する。本症例は移植後の腎炎再発リスクが高いと予想され、3年間の維持透析と扁摘後に腎移植を行った。しかし、早期に腎炎再発を認め、ステロイドパルス療法に塩化亜鉛鼻腔洗浄を追加したところ、再発性腎炎が沈静化した。難治性の再発性紫斑病性腎炎に対し、塩化亜鉛鼻腔洗浄は治療選択肢の1つになると考えられた。

スライド

戻 る  ページの先頭