消化管穿孔による免疫抑制薬中止により慢性活動性T細胞性拒絶を認めたPrune belly症候群の一例

東京女子医科大学東医療センター 内科
* 田村 友美
東京女子医科大学 第二病理
  種田 積子
東京女子医科大学 泌尿器科
  奥見 雅由、神澤 太一、角田 洋一、田邉 一成
東京女子医科大学 移植管理科
  海上 耕平、石田 英樹
東京女子医科大学 腎センター病理
  堀田 茂
聖マリアンナ医科大学 病理診断科
  小池 淳樹
昭和大学 顕微解剖学
  本田 一穂
東京女子医科大学 腎臓内科
  新田 孝作

 Prune belly症候群は、腹筋欠損、尿路異常、および腹部停留精巣で構成される症候群であり、尿路異常としては、水腎症、巨大尿管、膀胱尿管逆流症、尿道異常などがみられる。一部の例外を除いて主に男児に発生するが、原因は明らかになっていない。今回、Prune belly症候群による尿路奇形が原疾患の慢性腎不全患者に対し行った生体腎移植後、消化管穿孔を来し、免疫抑制剤の休薬をせざるを得なかった症例で、全身状態改善後に施行した移植腎生検でChronic active T cell mediated rejectionを認めたため、報告する。

【症例】36歳男性

【既往】Prune belly症候群(尿路奇形)による慢性腎不全、尿路再建術後、高血圧、心房細動(アブレーション後)、イレウス

【病歴】X-15年透析導入、X年9月19日に62歳の母をドナーとして血液型適合(O型→O型)、DSA(donor specific antibody)陰性の右腸骨窩生体腎移植術を施行した。術後Crが1.22mg/dlと改善を認めたため、同年10月12日退院となった。退院後、イレウスで2回入院し、いずれも絶食補液のみで症状は軽快し1週間程度の入院で帰宅となった。経過中白血球減少を認めたことから、ミコフェノール酸モフェチルの減量を行っており、X年12月初旬より、Cr1.3mg/dlから1.8mg/dlと上昇を認めたため、12月26日にエピソード生検を行い、急性T細胞性拒絶の診断となった。その後、X 1年1月15日に腹痛を主訴に受診され、下部消化管穿孔の診断で入院となった。Prune belly症候群であり、閉創困難が予想されたため、同日腹腔鏡下で穿孔部位を探したが発見できず、腹腔内洗浄とドレーン留置のみで終了となった。重症感染症であることから、同日よりメチルプレドニゾロン以外の免疫抑制剤を中止とし、PMX、CHDFを開始したが、感染コントロール困難であり、術後7日目に尿量50ml/日程度まで低下したため、術後8日に開腹で穿孔部の切除を行った。その後よりバイタル安定し、免疫抑制剤を再開した。開腹後6日に抜管したが、尿量50ml/日程度であったため、透析を継続し、Crは5mg/dl程度で経過した。開腹後26日より尿量は増加傾向となり、開腹後31日に尿量1000ml/日以上に増加したため、同日を最終透析とした。その後徐々にCr低下を認め、Cr2mg/dl程度で安定したため、開腹後42日に移植腎生検を施行した。間質の炎症細胞浸潤や尿細管炎を認め、弓状動脈及び小葉間動脈に弾性繊維の増加を伴わない高度の内膜肥厚を認め、90%以上の内腔狭窄および閉塞を認め、一部で内弾性板断裂と内皮細胞賦活が観察されたことから、慢性活動性T細胞性拒絶の診断であった。その後全身状態は改善を認め、開腹後70日に退院となった。
 その後もCrは2mg/dl程度、尿蛋白(-)〜(1)、尿潜血(-)〜(1)程度で推移している。
 免疫抑制剤中止による慢性T細胞性拒絶と、免疫抑制治療後のフォローアップ生検について、所見を比較し考察する。

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