生体腎移植後ドナーに発症した腎炎の検討
Importance of the follow-up in donors after kidney transplantation

名古屋第二赤十字病院 腎臓病総合医療センター
* 村田 実奈子、武田 朝美、大塚 康洋、新城 響、伊藤 千晴、
渡辺 裕、鷲野 将也、中野 穣、友杉 俊英、二村 健太、岡田 学、
平光 高久、後藤 憲彦、一森 敏弘、鳴海 俊治、渡井 至彦
増子記念病院
  西平 守邦、辻田 誠、両角 國男

 生体腎移植において最も考慮されるべきはドナーの生命および腎予後であり、生体腎移植前のドナー評価は適正に行われねばならない。腎移植時にはベースライン生検を行いドナー腎の評価も併せて行っているが、適正に評価されたとしても残念ながら片腎となったドナーに腎障害が発症してくることは避けられない。
 生体腎移植後ドナーフォロー中に腎障害を認め、腎生検を施行し治療介入し得た7症例について報告する。腎提供時年齢は61歳(52-74歳)で親子間5例、夫婦間2例であった。腎提供後9.7年(4-21年)の経過でRPGN2例、ネフローゼ2例、慢性腎炎症候群3例が精査のため開放性腎生検を受けた。RPGN例はANCA関連血管炎とIgA腎症、ネフローゼ例は膜性腎症、CGN例はIgA腎症2例と二次性FSGSを呈していた。IgA腎症2例と膜性腎症1例は腎移植時ベースライン生検(1時間生検)にて検尿異常がないにもかかわらずIgA沈着および膜性腎症を呈しており、腎提供後3-6年の短期間で腎炎を発症していた。二次性FSGS症例は腎提供後21年で生検されており、片腎における長期の糸球体過負荷が考えられた。ANCA関連血管炎症例は透析導入となったが、その他は治療介入により寛解または腎機能維持ができている。
 腎移植時ベースライン生検はドナーの腎予後にとっても必要であり、片腎となった腎提供後のドナーのフォローアップは必須である。

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