二次腎移植後1年目のプロトコル腎生検で診断に至ったフィブロネクチン腎症
Fibronectin nephropathy diagnosed at protocol allograft biopsy one year after secondary kidney transplantation

名古屋第二赤十字病院 腎臓病総合医療センター
* 武田 朝美、大塚 康洋、新城 響、伊藤 千晴、渡辺 裕、鷲野 将也、
友杉 俊英、二村 健太、岡田 学、平光 高久、後藤 憲彦、
一森 敏弘、鳴海 俊治、渡井 至彦

 原疾患が不明なまま腎移植術が施行され、再発性腎疾患の管理には難渋することは多い。
 症例は現在50歳の女性。10歳からネフローゼ症候群を呈し18歳時に名市大病院で腎生検を受けているが、詳細は不明(電顕試料は糸球体含まず)であった。29歳で末期腎不全となり、実父をドナーとして生体腎移植を受けた。
34歳(移植後5年)で慢性拒絶反応から血液透析導入となった。緩徐な血清クレアチニンの上昇と蛋白尿増加があり、移植後3年時の移植腎生検では慢性抗体関連型拒絶反応の診断であった。
 49歳で、48歳男性をドナーとする脳死下献腎移植を受けた。二次移植後の経過は順調であり、1年目のプロトコル生検が施行された。腎機能悪化はなくCre=0.87mg/dl、検尿異常は認めなかった。光顕所見では、拒絶反応なくCNI毒性所見はみられず、IF/TA進展も認めなかったが、糸球体病変としてメサンギウムから内皮下にわずかな沈着物が疑われた。IFはメサンギウム領域にIgM(+−)のみで有意な免疫グロブリンおよび補体の沈着はなかった。
電顕にて、内皮下からメサンギウム領域に無構造なEDDあり、EDDの間には細線維状の構造物が存在した。これらの腎生検所見よりフィブロネクチン腎症を疑い、臨床経過と初回腎移植時の移植腎生検を見直し、初回腎移植3年目生検組織でもフィブロネクチン腎症が確認できた。家族歴として母と伯母が腎疾患であり、18歳の名市大病院での腎生検時に遺伝性ネフローゼ症候群の可能性も考えられていた。
 フィブロネクチン腎症は常染色体優性遺伝性腎疾患であり、発症後15−20年で末期腎不全に至ることが多い。
腎移植後の再発は高率であり、原疾患として認識しておくことは重要である。

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