戸田中央総合病院における腎移植後Borderline changes症例の臨床病理学的検討
Clinical and pathological analyses of cases of borderline changes after renal transplantation in Toda Chuo General Hospital

戸田中央総合病院 泌尿器科・移植外科
* 清水 朋一
戸田中央総合病院 泌尿器科
飯田 祥一、東間 紘
余丁町クリニック
尾本 和也
川崎市立多摩病院 病理診断科
小池 淳樹

【目的】Borderline changes(BC)は、Banff分類において急性T細胞関連拒絶反応疑いの境界型の病変とされている。
今回我々は当施設におけるBC症例を臨床病理学的に検討した。

【方法】2010年4月から2019年3月までに戸田中央総合病院において施行した移植腎生検においてBCを認めた20症例の22病理組織標本(biopsy specimens: S)を対象とした。

【結果】男性13例、女性7例。全例生体腎移植で血液型適合12例、不適合5例、不一致3例であった。移植腎生検は移植後平均500日(10-3189日)で施行されていた。移植腎生検時の血中クレアチニン(s-Cr)は平均1.30mg/dl(0.81-2.21mg/dl)でテープ法での1以上の蛋白尿は4例に認めた。
 尿細管炎(Banff t score≧1)は全22 S(100%)に認め、t1が17S(77%)、t2が2S(9%)、t3が3S(14%)であった。
間質への細胞浸潤(i score≧1)は18S(82%)に認め、i1が16S(73%)、i2が2S(9%)、i3が0Sであった。傍尿細管毛細血管炎(ptc≧1)は14 S(64%)に認めた。間質の線維化と尿細管萎縮(interstitial fibrosis and tubular atrophy ;IF/TA)は4S(18%)に認め、傍尿細管毛細血管へのC4d沈着(C4d≧2)は4S(18%)に認めた。移植糸球体症(cg≧1)は1S(5%)に認め、傍尿細管毛細血管基底膜の多層化は3S(14%)に認めた。糸球体炎(g)と、動脈炎(v)、動脈内膜の線維性肥厚(cv)は認めなかった(0S)。病理組織診断としては、全例BCが主診断となっていた。
 経過観察中に移植腎喪失はなかったが、現在の平均s-Cr 1.37 mg/d(l 0.80-3.00mg/dl)で、移植腎生検後移植腎機能悪化が9例(45%)、移植腎機能改善が6例(30%)であとの5例(25%)は不変であった。

【結論】Borderline changesは尿細管炎と間質炎が主体で傍尿細管毛細血管炎を伴うことも多いが、糸球体炎が認められないことで急性T細胞関連拒絶反応疑いの境界型として問題ない。移植腎喪失に至ることはなかったものの、移植腎生検後移植腎機能悪化が45%と半数近くあり、BCは臨床病理組織学的に意義があり適切に治療し監視する必要があると思われた。

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