移植後10年以上経過した腎移植患者のグラフト生検に関する検討
KIDNEY ALLOGRAFT HISTOLOGY IN RECIPIENTS WITH TRANSPLANTATION VINTAGE LONGER THAN 10 YEARS

大阪大学大学院医学系研究科 腎臓内科学
* 難波 倫子、猪阪 善隆
大阪梅田医誠会 透析クリニック
京 昌弘
大阪大学大学院医学系研究科 腎疾患臓器連関制御学寄附講座
濱野 高行
山口病理組織研究所
山口 裕
大阪大学大学院医学系研究科 器官制御外科学講座(泌尿器科学)
谷口 歩、川村 正隆、中澤 成晃、加藤 大悟、阿部 豊文、
今村 亮一、野々村 祝夫
大阪大学大学院医学系研究科 先端移植基盤学講座
貝森 淳哉、市丸 直嗣
高槻病院 腎移植科
客野 宮治
関西メディカル病院 腎移植科
高原 史郎

【背景】移植後長期のグラフト生検を評価した研究は数少ない。本研究では、移植後長期(10年以上)で施行されたグラフト生検の組織学的特徴を明らかにするとともに、病理組織所見と関連を持つ臨床的特徴を明らかとすることを目的とした。

【方法】本研究では2002年から2018年の間に阪大関連2施設で施行した腎生検のうち、移植後10年以上経過した症例を対象とした。病理所見はBanff分類を用いてスコア化した。病理スコアに関連した臨床的因子の解析にはロジスティック回帰を用いて検討を行った。非線形回帰にはRestricted cubic spline functionsを用いた。

【結果】対象となった症例は107名で、移植後年数、生検時の年齢、移植時のドナー年齢の中央値(IQR)はそれぞれ、13(11、19)、49(42、59)、and 51 years(43、58)であった。生検時のeGFR、尿蛋白の中央値(IQR)はそれぞれ、29(24、40)mL/min/1.73m2 and 0.46(0.18、0.80)g/日であった。主な生検理由の内訳は、Cr上昇が50例(46.7%)、蛋白尿精査が35例(32.7%)、non-episodeが14例(13.1%)であった。病理スコアではIFTAを示すci、ct陽性症例(score>0)はそれぞれ57%、66.4%と半数以上を占めていた。細動脈の病変を示すah、aah陽性症例(score>0)はそれぞれ92.4%、79.1%と高率に認められた。糸球体病変については、cg陽性症例(score>0)が35.6%に、FSGS病変陽性症例が17例(15.9%)に見られた。これらの病理所見と関連する臨床的因子を探索したところ、ciスコア陽性は生検時のeGFRと移植後年数と関連があり[ オッズ比はそれぞれ0.48(95%CI 0.32-0.71)per 10 mL/min/1.73m2、and 1.17(1.05-1.30)per 10年]、ctスコア陽性は生検時のeGFRと蛋白尿と関連があった[ オッズ比はそれぞれ0.40(95%CI 0.26-0.63)per 10 mL/min/1.73m2、and 2.02(1.07-3.84)per 1g/日]。
また、FSGS病変は蛋白尿で補正してもドナー年齢と関連することが分かった[オッズ比は2.37(95%CI 1.16-4.88)per 10 year]。さらに非線形モデルを用いると、ドナー年齢が40歳以上でFSGSの陽性率が上昇した。

【結論】長期のグラフト生検の組織所見では、生検時の腎機能がIFTAと、尿蛋白がFSGS病変と尿細管萎縮と関連することが分かった。一方で移植後年数は間質の線維化と、ドナー年齢はFSGS病変に影響を持つことが明らかとなった。

戻 る  ページの先頭