JCウイルス調節領域配列の再構成を伴う、移植腎JCV腎症の1例
A case of JCV nephropathy in renal allograft with rearrangement of JC virus regulatory region sequence

市立札幌病院 病理診断科
* 辻 隆裕、岩崎 沙理、牧田 啓史、石立 尚路、深澤 雄一郎
市立札幌病院 腎臓移植外科
見附 明彦、原田 浩
国立感染症研究所 感染病理部
高橋 健太
国立感染症研究所 ウイルス第一部
中道 一生

 2017年の本研究会で、JCポリオーマウイルス(JCV)腎症の一例を報告した。今回、同症例について、JCVゲノムの詳細な追加検討を行ったため報告する。症例は40代男性。生体腎移植後3年9ヶ月の生検で尿細管上皮にスリガラス様封入体、核にSV40T陽性像を認め、ポリオーマウイルス腎症と診断した。血清と尿のPCRでBKV-DNAが陰性であったため、JCVについて検索を行ったところ、IHCで尿細管上皮の核にJCV VP-1抗原が陽性で、パラフィン切片で行った定量PCRでJCV-DNAが検出されJCV腎症と診断された。腎組織および尿からJCVのゲノム調節領域をPCR増幅し、TAクローニングを試みたところ、6種類の独立した配列をもつ複数のクローンが得られた。そのうち、3種類が腎組織と尿に共通し、1つはarchetype、2つは再構成型(rearrenged)であり、系統樹解析によりそれらの起源は同一であることが示された。再構成型ポリオーマウイルスは進行性多巣性白質脳症(PML)やBKV腎症の病変部から検出され、高度のウイルス増殖や高度な炎症に関連していると言われているが、JCV腎症での検出例はなかった。本症例では腎組織と尿で共通する再構成型JCVが検出されたことから、JCV腎症でも病態形成に再構成型JCVが関与している可能性が示された。文献的考察を加えて発表したい。

戻 る  ページの先頭