一次移植後、二次移植後に発症し病態診断に苦慮している移植後再発性膜性腎症の一例
A case of membranous nephropathy in kidney allograft which showed undetermined etiology

東邦大学医学部 腎臓学講座
* 高上 紀之、小口 英世、河村 毅、板橋 淑裕、米倉 尚志、櫻林 啓、
酒井 謙
東邦大学医学部 病理学講座
三上 哲夫
慶應義塾大学医学部 病理学教室
橋口 明典
昭和大学医学部 解剖学講座 顕微解剖学部門
康 徳東、本田 一穂

 1993年(27歳時)に腎生検で膜性腎症と診断された。光顕ではびまん性に基底膜の肥厚がみられ、メサンジウム細胞の増殖はみられず、IFではIgGが係蹄壁に顆粒状に強陽性を呈しており、電顕ではEhrenreich-Churg分類Ⅱ-Ⅲ相当であった。治療抵抗性の経過をたどり2004年4月に血液透析導入となった。
 2005年2月に血液型不適合生体腎移植を施行した。腎機能の悪化がみられ術後12日にエピソード生検を施行し、PTC炎と動脈内膜炎が目立つ抗体関連型拒絶反応の所見であり治療を行い術後72日で退院した。2005年12月にエピソード生検を施行し膜性腎症の所見であった。光顕所見では一部に糸球体炎がみられ、IFではIgGのみ係蹄壁に顆粒状に陽性像を示しており膜性腎症と診断した。IgGサブクラスはIgG2、IgG3が陽性、IgG4は陰性であった。その後の3回の生検でもIFにおけるIgGの陽性像は持続していた。治療反応性に乏しく、移植腎機能低下により2009年4月に血液透析再導入となった。
 2011年9月に血液型一致二次生体腎移植を施行した。移植後3か月生検でIFではIgGが係蹄壁に顆粒状に強陽性を呈しており膜性腎症と診断した。IgG1=IgG3>IgG2で陽性であり、IgG4は陰性であった。治療反応性に乏しくネフローゼレベルの蛋白尿が持続した。二次移植後3年生検で光顕所見でもspikeやbubblingが明らかに目立つようになり、IFではIgG以外にもIgA、IgM、C1qなども弱陽性〜陽性とフルハウスパターンを呈した。二次移植後6年生検では光顕におけるspike、bubblingの所見はさらに目立つようになり、IFでのフルハウスパターンが持続し、IgG1優位ではあるもののすべてのサブクラスで陽性像を呈し、電顕における高密度電子沈着物内のmicrospherical particlesが目立つ所見であった。

【考察】移植後膜性腎症のIgGサブクラス染色に関して、再発性膜性腎症ではIgG4が優位となり、de novo膜性腎症ではIgG1優位となるという報告がある(N.Kearney, et al. Transplant Proc.2011;43:3743-3746)。本症例は一次移植後はIgG2陽性、IgG3陽性、IgG4陰性であるが、二次移植後はIgG1優位であるものの経時的にすべてのサブクラス染色で陽性を呈し、IgG以外もフルハウスパターンの染色を示した。特発性膜性腎症の再発や拒絶に伴うde novo膜性腎症では説明しがたく、特殊な二次性膜性腎症の再発経過も想定されるが議論すべき部分が多い。電顕におけるmicrospherical particlesの病態への関与があるかという点も興味深いところである。本症例の膜性腎症の病態に関して意見を頂きながら検討したい。自己腎生検におけるIgGサブクラス、直近の生検検体の質量分析の結果について本会で追加提示する予定である。

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