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【背景】ヒトの腎移植におけるIschemia-reperfusion injury(IRI)の病理学的特徴や炎症応答の詳細な機序については明らかでない。
【目的】ヒトの生体間腎移植の移植後早期に起こるIRIの病理学的特徴と臨床的背景・予後を明らかにする。IRIの臨床病理学的リスク因子とIRIに関連したバイオマーカーを検討する。
【方法】昭和大学病院で2015年1月から2022年3月に生体間腎移植を施行された51症例を対象とした。移植0時間生検、移植後1時間生検の病理組織標本を用いてIRIによる尿細管傷害度を尿細管傷害スコアリングシステムにより評価した。0時間生検と1時間生検の尿細管傷害度スコアの合計の差をΔscore=score(1h)− score(0h)をIRI scoreとし、IRI high-grade(Δscore≧6)とIRI low-grade(Δscore<6)に分類した。51症例中9症例(IRI highgrade4例,IRI low-grade5例)でCD68、HMGB1、TLR4、IL-6、IL-1β、TNF-α、KIM-1、NGALの組織での発現を免疫染色により比較した。
【結果】51症例中12例をIRI high-grade、39例をIRI low-gradeに分類した。移植後1週間、1ヶ月、1年の血清Creatinine値はIRI high-grade群とIRI low-grade群で有意差は認めなかった。IRIの臨床的リスク因子としてCold ischemia time(min)に有意な相関を認めた(OR=1.01,95%CI: 1.00-1.02,p=0.02)。IRI high-grade群ではIRI low-grade群に比較して、髄放線領域の近位尿細管上皮における空胞状変性が多く見られた。間質に浸潤するCD68陽性細胞数はIRIのgradeによらず0hから1hで差は認めなかった。IL-1β、IL-6、TNF-αはIRI gradeによらず0hから1hで有意に染色性が増強していた(それぞれp=0.005, p=0.005, p=0.02)。
【結論】cold ischemia timeは移植後早期のIRIのリスク因子と考えられた。生体腎移植におけるIRIは可逆性で長期的には移植後の腎機能やグラフト喪失に影響を与えず、臨床的意義は少なかった。IRIの病理学的特徴として髄放線領域の近位尿細管上皮の空胞状変性が最も顕著であった。移植後早期のIRIでは炎症細胞浸潤の関与は少なく、尿細管上皮自体の炎症性サイトカインの発現の増加が関与していることが示唆された。 |