ALLに対する臍帯血移植後に父をドナーとする血液型不適合腎移植を行いTMA型超急性拒絶反応に対してラブリズマブを含む集約的免疫抑制療法が奏功した一例
Successful Treatment of TMA-Type Hyperacute Rejection with Ravulizumab After ABOIncompatible Kidney Transplantation from Father Following Cord Blood Transplant for ALL

昭和医科大学医学部 内科学講座 腎臓内科学部門
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杉山 定、鈴木 泰平、山下 茉由、梶尾 優希、本田 浩一

昭和医科大学医学部 解剖学講座 顕微解剖学部門
梶尾 優希、康 徳東、川西 邦夫
昭和医科大学医学部 外科学講座 消化器一般外科学部門
加藤 容二郎、吉武 理
昭和医科大学病院腎移植センター
加藤 容二郎、吉武 理
昭和医科大学医学部 臨床病理診断学講座
本田 一穂

【症例】31歳男性。
【経過】X-20年に急性リンパ性白血病を発症し臍帯血移植で完全寛解した。白血病の治療経過とともに徐々に腎機能悪化しX-18年に腎生検を施行したが原疾患は特定できず薬剤性サイトメガロウイルス感染症放射線治療などの複合的要因による腎不全と考えられた。その後徐々に腎機能が低下しX-1年7月に血液透析導入となった。X年2月、二重ろ過血漿交換とリツキシマブ(RTX)による術前脱感作療法とタクロリムス(TAC)ミコフェノール酸モフェチルメチルプレドニゾロンバシリキシマブによる免疫抑制導入による父をドナーとした生体腎移植(血液型不適合A型(+)→B型(+)HLA3ミスマッチリンパ球クロスマッチB-cold陽性)を行った。再灌流直後より血小板の進行性低下を認め破砕赤血球を伴う溶血性貧血を認めたため、血栓性微小血管症(TMA)が疑われ血漿交換ステロイドパルス療法RTXを施行し薬剤性TMAの可能性も考慮してTACをシクロスポリンとエベロリムスに変更した。血流再開2時間後のベースライン腎検では糸球体炎所見とともに糸球体係蹄腔内に新鮮なフィブリン血栓が多数みられびまん性の尿細管上皮障害と間質の浮腫・出血を認めTMA型超急性拒絶反応と診断した。また蛍光抗体法による観察では糸球体に強いC3沈着を認め補体制御因子異常による非典型的溶血性尿毒症症候群(aHUS)の可能性も考えられた。その後も腎機能障害や血小板低値が遷延したため術後24日目及び38日目にラブリズマブ(RAV)をそれぞ2400mg3000mg投与した。ラブリズマブ投与後より血小板数や移植腎血流の著明な改善認め透析を離脱した。術後1ヶ月における腎生検では糸球体炎の残存は認めるもののフィブリン血栓やC3沈着は消失した。その後血清Cr値 1.47 mg/dlまで改善したため術後42日に退院となった。
【結語】臍帯血移植後に父をドナーとする血液型不適合腎移植でみられたTMA型の超急性拒絶反応に対しRAVを含む集約的免疫抑制治療が奏功した症例を経験した。臍帯血移植後患者の腎移植例は少なく、もともと移植片である血球細胞がレシピエントと血縁の腎グラフトに対して引き起こす免疫反応の機序も複雑である。腎移植後の拒絶反応に対するRAVの使用例も少なく治療経過と移植腎の病理学的変化を検討し報告する。

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