肉眼的血尿で発症したGraft Intolerance Syndromeの1例
A Case of Graft Intolerance Syndrome Presenting with Gross Hematuria

東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科
* 中村 達也、川邊 万佑子、山本 泉、前 遥貴、大木 悠太郎、林 綾香、神崎 剛、小林 賛光、松本 啓、上田 裕之、松尾 七重、丹野 有道、坪井 伸夫、山本 裕康、横尾 隆
東京慈恵会医科大学 泌尿器科
木村 高弘

【症例】51歳男性。糖尿病性腎症原疾患としてX-10年に血液透析導入。X-6年5月に叔父をドナーとする血液型適合生体腎移植を施行し、Cr 1.70mg/dLで退院した。X-5年5月にCr 2.1 mg/dL、蛋白尿 3.6 g/gCrにて腎生検となり、T胞関連型拒絶反応及び二次性巣状糸球体硬化症(FSGS)の診断にてスロイドパルス療法及び食事療法・減量・降圧を徹底した。しかし、生活習慣の改善は得られず、その後も腎機能が悪化し、腎移植後わずか4年で血液透析再導入となった。血液透析再導入時の腹部CTで右腎がんを認め、右腎摘出術を施行した。Graft Intolerance Syndrome(GIS)発症リスクが高いと判断し、MMF中止後は、約2年かけてmPSL及びTACを漸減中止とした。しかし、免疫抑制剤中止後3か月目に突然の肉眼的血尿と移植部位の疼痛が出現し、入院となった。精査にてGISと診断し、ステロイドパルス療法及びTAC再開したところ、肉眼的血尿や移植部位の疼痛は改善し、炎症反応も改善したため、GIS発症後2か月目に移植腎を摘出した。摘出した腎臓には、血管系において、葉間動脈レベルから小葉間動脈にかけて内腔が高度に狭小化したTransplant Arteriopathyを認めた。皮質から髄質にかけて広範な傍尿細管毛細血管およびVasa rectaの破綻と内皮細胞に接する単核・多核球浸潤が見られ、間質域の出血を認めた。尿細管には尿 細管炎が見られ、内腔には大量の赤血球が充満していた。さらに、皮質域には、3次リンパ組織の形成が散在性に認められた。
【考察】GISによる腎摘出のリスク因子は、拒絶反応の既往や短いグラフト生存期間が知られている。本例では、病理学的にも極めて活動性の高い拒絶反応の持続が認められたことから、注意深く免疫抑制剤を減量した場合でも、慎重な対応が必要と考えられた。

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