移植腎病理結果より考える膵腎同時移植における免疫抑制剤管理の最適化アプローチ
An Optimized Approach to Immunosuppressive Therapy Management in Simultaneous Pancreas-Kidney Transplantation Based on Allograft Kidney Pathology Findings

大阪大学医学部附属病院 移植医療部
* 余西 洋明、角田 洋一
大阪大学大学院医学系研究科 腎臓内科学
余西 洋明、徳地 真帆、難波 倫子、高橋 篤史、猪阪 善隆
大阪大学大学院医学系研究科 器官制御外科学講座(泌尿器科)
角田 洋一、川村 正隆、中澤 成晃、野々村 祝夫
大阪大学大学院医学系研究科 外科学講座 消化器外科学
富丸 慶人、秋田 裕史、江口 英利
大阪大学大学院医学系研究科 内分泌・代謝内科学
川田 哲史、宮下 和幸、下村 伊一郎

【背景】膵腎同時移植(Simultaneous Pancreas-Kidney Transplantation、SPK)において移植腎予後は生命予後に大きな影響を及ぼす。しかしながら当院おいてSPKの移植腎予後は生体腎移植の移植腎予後に比べ劣っている。確かにSPKは脳死下移植のため生体腎移植に比して長時間の阻血時間が存在するなど介入不能な要因が存在する。ただ生体腎移植ではカルシニューリン阻害薬(CNI)として徐放性製剤であるグラセプター®を使用している一方でSPKではプログラフRを使用していることもあり濃度のターゲットが異なる(Table:1)。移植腎機能を維持するために拒絶反応やCNIによる毒性を防ぐ適切な免疫抑制剤の管理が重要である。予後改善のための介入可能因子として免疫抑制剤プロトコルの改善点がないか探索するため、SPK後の移植腎生検の病理標本の検討を行った。
【対象】大阪大学消化器外科および泌尿器科でSPKを施行した患者のうち、62例の患者を対象とした。病理標本に関しては術後1〜5年の間に移植腎生検を施行した39人の病理組織結果を検討した。生着率および生存率はカプランマイヤー法で計算した。
【結果】全体の1年、5年、10年の生存率はそれぞれ96.7%、94.9%、91.8%であり、1年、5年、10年の腎生着率は95.0%、92.9%、81.2%であった。移植後1年〜5年に施行した腎生検結果では30.7%(12/39)とCNI毒性を高率に認める一方で拒絶反応は12.8%(5/39)であった。SPK後3〜12か月の平均タクロリムス濃度がa)<6ng/ml群(15例)とb)>6ng/ml群(24群)の2群に分けて上記病理結果を検討するとCNI毒性はa)群20.0%(3/15)、b)群37.5%(9/24)であった。一方で拒絶反応はa)群13%(2/15)、b)群12.5%(3/24)であった(Figure:1)。
【結論】SPK後にはCNIによる腎毒性の影響が顕著に現れている。一方で移植3ヶ月以降はタクロリムス濃度を6ng/ml未満としても拒絶反応を増加させることなくCNIによる腎毒性を抑えることができる可能性がある。

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