HLA-DSA陰性で高度の間質炎を伴い、ステロイド治療に抵抗性の経過をたどったC4d陽性抗体関連型拒絶反応(ABMR)の1例
A case of steroid-resistant HLA-DSA-negative and C4d-positive antibody-mediated rejection (ABMR) with severe interstitial inflammation

市立札幌病院 病理診断科
*

中桐 悠一郎、眞田 美和、山口 貴子、古屋 充子、岩崎 沙理、辻 隆裕

北海道大学大学院医学研究院 統合病理学教室
岩崎 沙理
札幌医科大学附属病院 泌尿器科
西尾 優希、太刀川 公人、田中 俊明
市立札幌病院 腎臓移植外科
太刀川 公人

【症例】20代前半の男性。悪性高血圧を原疾患とする末期腎不全(自己腎生検なし)に対し、母をドナーとする血液型適合の先行的生体腎移植術を施行された。術後経過は良好で、移植後約1ヶ月でのプロトコル生検では拒絶の所見を認めなかった。移植後188日に施行された6ヶ月プロトコル生検で、C4d陽性化およびごく軽度の間質炎(i1)の所見を認め、拒絶反応の初期像である可能性が考えられた。生検結果も踏まえ、移植後198〜201日にステロイドパルス療法を施行されたが、移植後245日のエピソード生検検体では間質炎の増悪(i2)や軽度の尿細管炎(t1)がみられ、borderline changesの基準を満たす所見であった。拒絶の所見の顕在化を受け、移植後267〜272日にステロイドおよびサイモグロブリンの投与が行われた。移植後322日のプロトコル生検では、リンパ球を主体として形質細胞を混じた高度の間質炎(i3)やびまん性の高度の傍尿細管毛細血管炎(ptc3, diffuse)、軽度の糸球体炎(g1)が出現し、C4d陽性所見も踏まえ活動性抗体関連型拒絶反応(active ABMR)の基準を満たす所見であった。生検結果を受け、2回の血漿交換、リツキシマブ 200 mg投与、免疫グロブリン投与および2回のステロイドパルス療法を施行されたが、腎機能低下や蛋白尿の増悪がみられた。移植後366日に行われた治療後のプロトコル生検検体では、引き続きactive ABMRの基準を満たす傍尿細管毛細血管炎や糸球体炎の所見を認めたが、炎症細胞の密度は前回生検検体に比べ減少していた。一方、尿細管萎縮/間質線維化(IFTA)が20%程度と増加していたほか、糸球体の分節性硬化や細動脈硝子化が出現しており、腎機能低下や蛋白尿の原因と考えられた。HLA-DSAは、上記の経過を通して陰性であった。
【考察】本例はステロイドパルス療法に抵抗性の経過をたどった抗体関連型拒絶であるが、初期の生検検体ではC4dの陽性化とごく軽度の間質炎を認めたのみであった。抗体関連型拒絶の発症を予測する上で、血液型適合移植症例におけるC4dの陽性化は注意を要する所見と考えられ、C4dの陽性化に伴い組織学的な炎症をみる場合は、軽微なものでも拒絶の可能性につき注意を促すことが望ましい可能性がある。初期の生検検体で認めた軽度の間質炎の意義やその後の生検検体におけるABMRの所見との関連、また治療後期の生検検体で出現した糸球体の分節性硬化の成因などについても考察を加えて報告する。

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