空間遺伝子発現解析が見出した新規ABMR分子マーカーとしてのHLA-F
Spatial Transcriptome Analysis Identified HLA-F as a novel biomarker of ABMR

東京女子医科大学 泌尿器科
* 平井 敏仁、八木澤 隆史、高木 敏男
東京女子医科大学 移植管理科
* 清水 朋一、海上 耕平、尾本 和也、石田 英樹

腎移植における抗体関連型拒絶反応(antibody-mediated rejection: ABMR)の診断には、微小血管障害(microvascular injury: MVI)が主要な組織学的所見として必須である。しかしながら、MVI単独では確定診断や正確な予後予測には不十分であり、ドナー特異的抗体(donor-specific antibodies: DSA)や抗体介在性組織障害を示す分子学的シグネチャーなどの追加的証拠が必要とされる。我々はこれまでの研究において、ABMRにおける空間解析により、CD31陽性内皮細胞とCD68陽性マクロファージとの相互作用が予後に重要であることを報告してきた。
本研究では、この細胞間相互作用の分子機構をさらに解明するため、GeoMx Digital Spatial Profilerを用いて、特に尿細管周囲毛細血管(peritubular capillaries: PTC)に着目したMVI領域の空間トランスクリプトーム解析を実施した(図1)。その結果、MHCクラスI関連シグネチャー遺伝子の発現上昇が認められ、特にHLA-FがABMRのPTC病変においてCD31陽性細胞およびCD68陽性細胞の双方で顕著に発現していた。HLA-Fの発現はIFN-γ応答スコアと密接に関連しており、抗体介在性組織障害の重症度を反映する指標となる可能性が示唆された。
そこで、ABMR症例42例を含む計67例のホルマリン固定パラフィン包埋(formalin-fixed paraffin-embedded: FFPE)標本にHLA-F免疫組織染色を行い、HLA-F発現をスコアリングし(図2)臨床データとの相関を解析したところ、HLA-FスコアはMVIスコアのみならず、DSAの有無および推算糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate: eGFR)の低下とも有意に相関していた。
以上より、HLA-FはABMRの病態形成および予後に関連する新規分子マーカーであることが示された。

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