長期安定移植腎Non-episode biopsyの検討
-血管病変の病理組織学的検討-

大阪大学 医学部 泌尿器科
* 土岐 清秀、京  昌弘、高原 史郎、市丸 直嗣、王  晶釘
小角 幸人、奥山 明彦、岡  一雅、今井 圓祐、羽鳥 基明
両角 國男
東京女子医科大学 泌尿器科
徳本 直彦、田辺 一成、東間  紘
東京女子医科大学 腎センター検査科
堀田  茂
東京慈恵会医科大学柏病院 病理
山口  裕

【目的】  長期安定移植腎において、その血管病変は長期生着に影響をあたえる重要な所見である。このうち、慢性薬剤性腎障害に伴う血管変化は細動脈のhyalinosisおよびinsudative changeが特徴的な所見といわれている。われわれは、これまでnon-episode biopsyを施行し、その病理学組織像の検討を行ってきたが、薬剤の投与量や血中濃度が低いにもかかわらず、これらの血管変化を少なからず認めてきた。このためnon-episode biopsy症例の細動脈病変について、その細動脈病変を中心に再検討したので報告する。
【対象と方法】
 阪大病院および関連施設において、長期生着移植腎に対し腎生検を施行された130例中、non-episode biopsyとして血清Cr2.0mg/dl以下、尿蛋白陰性である65例を対象とし、細動脈の血管病変について臨床所見との相関を検討した。
【結果】  Non-episode biopsy 65例のうち29例に細動脈の血管病変を認めた。このうちFK506症例は10例、CsA症例は19例であった。また、14例に急性拒絶反応の所見を認め(AR-B:10例、AR-G1A:4例)、10例にchronic allograft nephropathy、5例にIgA腎症の所見を認めた。19例はほぼ正常所見であった。細動脈病変を有した29症例について検討した結果、薬剤投与量、薬剤濃度とは相関を認めなかった。移植後日数および腎年齢については細動脈病変の頻度および程度と相関が認められた。また高血圧を認めた症例の方が細動脈病変の頻度が有意に高値であった。
【結論】  Non-episode biopsyにおける細動脈病変には、薬剤だけでなく移植後生着日数、腎年齢、高血圧などが強く関与していると考えられた。

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