激しい血管病変を呈したABO不適合生体腎移植後FK506腎毒性の1例

東京女子医科大学 腎センター 泌尿器科 
* 清水 朋一、田辺 一成、徳本 直彦、後藤 由紀子、伊藤 慎一
東間  紘
東京慈恵医科大学付属柏病院 病理
山口  裕

 激しい血管病変を呈したABO不適合生体腎移植後FK506腎毒性の1例を経験したので報告する。
 症例は47歳女性、血液型A型Rh+。原疾患はIgA腎症。慢性腎不全にて平成7年2月22日血液透析導入となった。平成8年8月6日、AB型Rh+の夫をドナーとしたHLA1ミスマッチ、ABO不適合生体腎移植術施行した。免疫抑制はFK506、メチルプレドニゾロン、アザチオプリン、ALGの4剤とした。移植前に2回のDFPPを施行し、坑B抗体価は生食法、ブロメリン法、間接クームス法それぞれ2倍、4倍、2倍まで下降していた。移植直後より移植腎機能は良好にて、移植前にはs-Cr13.6mg/dLであったが移植後2日にはs-Cr1.2mg/dLまで下降した。8日よりs-Cr上昇し始め、移植後9日目にはs-Cr1.7mg/dLまで上昇したため移植腎生検を施行した。9日目のFK506 trough levelは35.6ng/mLであった。病理組織学的には、1. Humoral rejection with glomerulal and arteriolar thrombosis and cortical necrosis. 2. Focal aggressive inerstitial rejection, mild. 3. FK506 toxic tubulopathy.であった。その後s-Cr2.2mg/dL前後で経過していたが、平成9年2月頃より0.4〜0.8g/dayの蛋白尿が出現してきた。 FK506 trough levelは8.0〜8.9ng/mLであった。蛋白尿精査のため平成10年8月10日施行した移植腎生検では、1. FK506 arteriolopathy with collapsed glomeruli and striped interstitial fibrosis. 2. IgA nephropathy, recurrent.であった。 蛋白尿がその後も増加1.3g/day前後となったため平成11年5月27日再度移植腎生検を施行した。病理組織学的には、1. FK506 arteriolopathy with collapsed glomeruli and striped fibrosis, advanced. 2. Mesangial proriferative glomerulonephritis, mild(IgA nephropathy, recurrent.). 3. Focal segmental sclerosis, moderate to mild. と、FK506の腎毒性のうちでも激しい血管病変を呈していた。最近のFK506 trough levelは5.7〜6.1ng/mLであった。
 本症例を通してFK506の腎毒性、特に血管病変についてFK506 trough levelや動脈硬化との関連等を含め文献的考察を加えて報告する。

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