Late-onset bone marrow transplant nephropathyの1例

名古屋第二赤十字病院 腎臓病総合医療センター
* 武田 朝美、戸田  晋、福田 道雄、吉田 篤博、稲垣 浩子
佐藤 哲彦、渡辺  出、片山 昭男、幅  俊人、冨永 芳博
打田 和治   
同 血液内科
後藤 整一
名古屋市立大学 第三内科
及川  理、両角 國男、木村 玄次郎

 症例は、30歳の男性。21歳時に慢性骨髄性白血病(CML)発症し、1991年10月22歳時にHLA identical、ABO型一致の実妹をドナーとして同種骨髄移植を受けた。ConditioningはCyclophosphamideとTBI 12Gyで行われ、GVHD予防にはCiclosporin(CSA)とshort term MTXが使用された。術後経過はほぼ良好で、I゜GVHDを経験したのみで退院となった。高血圧や検尿異常はなく、腎機能はsCr=1.1mg/dl前後であった。CSAは10か月間使用して中止された。1997年の検診ではじめて蛋白尿、血尿を指摘され、高血圧も伴っていたが、放置していた。1999年1月に再度検尿異常と高血圧の指摘あり、sCr=1.34mg/dlと悪化あるため腎臓内科に紹介された。血圧はCa拮抗剤でコントロールされていたが、腎病変の精査のため1999年4月に腎生検を施行した。腎生検時データはsCr=1.19zmg/dl, CCr=86ml/min, 蛋白尿0.7g/dayであった。糸球体病変は、メサンギウム基質の軽度増生に加え基底膜の不規則な二重化が存在し、ごく一部には内皮下のバルン様の拡大を伴っていた。2-3個の糸球体には硝子化や上皮細胞の増生を伴うsegmental sclerosisを認めた。間質には縞状線維化と萎縮尿細管がひろがり、殆どの細小動脈が全周性の内膜下hyalinosisやムチン様物質の沈着によって管腔は閉塞または狭小化していた。移植腎におけるCSA associated arteriolopathyに酷似した血管病変であった。同種骨髄移植後7年以上を経過して出現した腎病変であり、chronic radiation nephritisに相当するものと考えられるが、CML治療や骨髄移植時の化学療法剤による遅発性内皮細胞障害の影響も加味せねばならない。また、高度な細小動脈病変の成り立ちへのCSAの関与についても検討したい。


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