de novo RPGN様腎炎で紫斑病性(HSP)腎炎が疑われた一例

東京女子医科大学 泌尿器科
* 清水 朋一、田辺 一成、徳本 直彦、新村 浩明、古賀 祥嗣
東間  紘
東京慈恵会医科大学柏病院 病理
山口  裕

 症例は46歳男性。21歳時にNIDDMを指摘されていた。平成7年5月頃より腎機能が悪化し、平成7年10月16日血液透析導入。平成8年1月30日、米国にて死体腎移植施行。移植4日後と4カ月後に動脈吻合部よりの出血により再手術施行され、移植4カ月後の手術時には移植腎摘出術施行され透析再導入となった。平成8年10月31日、米国にて2次移植(死体腎移植)施行された。移植後移植腎機能は良好にて、平成9年1月13日にはs-Cr1.4mg/dLであった。帰国後当科にて外来フォローしs-Cr1.1mg/dL前後と移植後移植腎機能は良好であった。平成9年3月頃より検尿にて尿蛋白が1+程度検出されていた。平成10年12月25日外来受診時、s-Cr1.6mg/dLと上昇し検尿にて尿蛋白が3+と蛋白尿が指摘された。平成11年1月中旬頃より腹痛及び腹部膨満感出現し、尿量減少したため1月23日入院。s-Cr1.8mg/dLと移植腎機能低下を認め、10.13g/dayの高度の蛋白尿を認めたため、1月25日移植腎生検施行した。病理組織学的には、光顕所見ではCrescentic glomerulonephritisを呈していた。蛍光抗体所見ではIgAのperipheral granular沈着が主体であった。電顕所見では上皮下の高電子密度沈着が主体で、内皮下及びメサンギウム内への沈着も認められた。免疫抑制剤をCYAからFKへ変更することにより、蛋白尿の減少と移植腎機能の一時的な改善を認めたが、その後移植腎機能が急速に悪化し、3月にはs-Cr2.1mg/dL、4月にはs-Cr6.8mg/dL、5月14日にはs-Cr8.5mg/dLとなり、5月31日CAPD導入となった。本症例では、移植腎にde novo腎炎が発症しRPGN様の経過をたどったと思われる。腹部膨満・腹痛の臨床症状と病理組織学的所見から紫斑病性(HSP)腎炎が疑われるが、他の腎炎の可能性も含め検討したい。

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