ABO血液型不適合生体腎移植後の溶血性尿毒症症候群(HUS)についての検討

東京女子医大学 泌尿器科
* 田邉 一成、徳本 直彦、清水 朋一、新村 浩明、古賀 祥司
石川 暢夫、東間  紘
東京慈恵会医科大学柏病院 病理
山口  裕

 平成11年6月に施行した2例のABO不適合生体腎移植患者について、移植後溶血性尿毒症症候群(HUS)の発症を病理組織学的に診断した。症例1は21歳、女性。原疾患IgA腎症にてH7年9月7日腹膜透析導入となった。H11年6月2日、父をドナーにABO不適合生体腎移植術(A(+)→O(+))を施行。免疫抑制はFK+AZ+MP+DSGの4剤にて行い,術後3回局所放射線照射および脾摘術も行った。その他Ticlopidine, PGE1, Ulinastatinも投与した。移植後の腎機能はCr1.1mg/dlで安定していたが,術後20日目突然Cr2.0と上昇。同時に血小板減少、溶血性貧血(末梢血smearにて破砕赤血球多数)、LDHの上昇も認めた。HUSと診断し血漿交換を施行した。術後27日目に施行した移植腎生検ではHUSの所見で、一部の糸球体に細動脈血栓と上皮細胞の高度の硝子滴変性を認めた。現在S-Cr1.1mg/dlで外来経過観察中である。症例2は23歳、男性。原疾患不明でH10年9月30日血液透析導入した。H11年6月22日、父をドナーにABO不適合生体腎移植術(B(+)→O(+))を施行。免疫抑制はFK+AZ+MP+DSG+ALGの5剤にて行い,術後3回局所放射線照射および脾摘術も行った。その他ticlopidine, PGE1, Ulinastatinも投与した。術後1日目に高度の血小板減少を認めた。同時に溶血性貧血(末梢血smearにて破砕赤血球多数)、LDHの上昇も認めた。HUSと診断し血漿交換を施行した。術後7日目に施行した移植腎生検では、 HUSの所見で糸球体病変が主体であった。同時にVascular rejection も認められた。FKによる急性尿細管毒性ははっきりと認めなかった。術後14日目にも再度血小板減少を認め血漿交換を施行した。現在S-Cr2.18mg/dlで外来経過観察中である。以上の2症例の後も、ABO不適合生体腎移植後のHUS発症を病理組織学的に診断した症例が散見された。そのため今回我々は、当腎センターにて現在までに施行したABO不適合生体腎移植全症例について、HUSの発症を病理組織学的・臨床的にretrospectiveに検討した。

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