移植腎1時間生検に好中球が有意に多く、その後特異な組織像を呈したdelayed graft functionの一例

名古屋第二赤十字病院 腎臓病総合医療センター
* 稲垣 浩子、武田 朝美、打田 和治、幅  俊人、冨永 芳博
片山 昭男、渡邊  出、佐藤 哲彦
名古屋市立大学 第三内科
及川  理、両角 國男

 症例は50才の女性。原疾患は不明、45才時より慢性腎不全を指摘され、48才時にCAPD導入された。子宮頚部上皮内癌による子宮全摘出術の既往のためハイリスク群として献腎登録されており、平成12年4月14日に頭部外傷の57才男性からの献腎移植を受けた。免疫抑制剤はプレドニゾロン、タクロリムス、アザチオプリンの3剤が使用された。一時間生検像で高度の急性尿細管壊死と傍尿細管毛細血管内好中球浸潤が存在し、DIC kidneyはなかった。術直後よりLDH,GOT,GPTの上昇を認め、移植腎血流シンチでも皮質血流は不良であった。4月19日(POD5)1回目移植腎生検施行、ATNは高度で間質や尿細管への好中球の浸潤像が持続し、糸球体血栓、PTC血栓、間質出血を認めた。透析療法を継続し、血流シンチではゆっくりと皮質血流は改善した。その後消化管出血や血小板減少などを認め、尿量は保たれたがクレアチニン値の低下は悪く、5月11日(POD27)2回目移植腎生検を施行した。高度な虚血性変化が主体で一部の細動脈内膜に浮腫性変化、泡沫細胞を認めた。透析は5月15日を最終として離脱でき、現在血清クレアチニン2.5mg/dl前後で安定、5月25日(POD41)に3回目移植腎生検施行した。治療経過、臨床経過とあわせて、判断に苦慮した生検組織像を御検討いただきたい。

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