腎移植患者の突然死剖検例

大阪船員保険病院 病理
* 岡田 正直
大阪船員保険病院 泌尿器科
客野 宮治、今村 亮一、中村 隆幸
大阪大学 泌尿器科
高原 史郎

タクロリムス使用腎移植患者が突然死した。 その剖検所見を報告する。

【症例】 50歳女性。1987年8月31日、兄をドナーとして阪大にて生体腎移植施行。2000年12月7日、腹水と下肢浮腫にて大阪船員保険病院泌尿器科に入院した。腹部エコーと、CT、その他に異常はない。12月7日、Cr2.27mg/dl 12月21日、Cr2.74mg/dl、12月22日から12月26日に、スパニジン投与を開始した。12月26日から高熱のために抗生剤を3日間投与した。12月30日Cr3.15に上昇したが、2001年1月5日Cr2.32に下降した。1月6日早朝2時頃、突然呼吸が停止した。心マッサージをするも回復せず、午前2時52分に死亡を確認した。
【剖検所見】
肉眼的所見。患者腎左50g、右50g、移植腎210g、表面平滑。心臓260g。肺にうっ血あり、左肺400g、肺浮遊試験1/5浮く。右肺560g、1/5浮く。肉眼的に主な臓器に著変はない。開頭せず。 組織学的所見 。心臓刺激伝達系、房室結節左脚 ・右脚に石灰化があった。房室結節、プルキンエ線維、洞房結節には異常はない。移植腎は腎硬化症に陥り、腎実質の約半分が、"甲状腺腎"となる。大動脈アテローム硬化が高度、冠動脈硬化は軽度。肝線維症、HCV(+)。転移性石灰化が肺、膵、心房室結節左脚・右脚、患者腎、移植腎にあった。
【考案】 剖検例から見た腎移植患者の直接死因は感染症 、出血、悪性腫瘍、肝障害の順であると報告されている。タクロリムス使用腎移植患者から生まれた新生児が生後3日で死亡した剖検例が報告されている。新生児は3日目に、全身浮腫、腎不全、高度の貧血、高度の代謝性アシドーシス、最後には心室細動で死亡した。剖検心は大きくなり、拡張し、貧血性で、たるんでいた。心の形は球状で、左心房と左心室先端に器質化しかけた血栓があった。組織学的には、心筋の空胞化と変性があり、間質には浮腫と出血があった。肺には著明な出血があった。血栓性拡張性心筋症。本例の主要臓器には、直接死因になるような所見はなかった。移植腎には、腎硬化が、かなり進行していたが、Cr値からは、経過はほぼ良好であった。入院後、血清Ca10.5〜11.8mg/dlと、Ca値は高かった。このために転移性石灰化があり、その一部として、心臓に石灰化があったと考えられる。心の石灰化は刺激伝導系に限局し、主に房室結節下部の結合織とヒス束下部の結合織に見られ、一部、右脚・左脚起始部にも見られる。このような石灰化は偶発所見として、他の剖検心にも時に見られる。従って、本例の刺激伝導系石灰化の臨床的意義は評価しがたい。タクロリムス使用腎移植患者の心石灰化所見を呈示した。

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