尿細胞診による移植腎拒絶反応の診断

桜橋循環器クリニック
* 京  昌弘
兵庫県立西宮病院
市川 靖二、福西 孝侵、永野 俊介
Basel大学
M.J.Mihatsch

【目的】 移植腎モニタリングの方法については、腎生検による病理組織学的検査が最も有用であり、最近は積極的にプロトコ−ル生検を行っている施設もある。しかしながら、腎生検は侵襲的手法であり合併症も完全には否定し得ず、非侵襲的手法との併用が望まれる。今回、演者らが以前行っていた尿細胞診による急性拒絶反応(AR)診断法が、病理組織学的診断にどこまで近づくことができるかを検討した。
【方法】 1988年より1996年まで、Basel大学及び兵庫県立西宮病院で、腎移植後尿細胞診にて移植腎モニタリングを行った移植腎85例を対象とした。尿細胞診は、New-Sternheimer染色、Papanicolaou染色、免疫細胞化学染色を行った。
【結果】 1)AR時には、リンパ球、単球、尿細管上皮細胞等尿中単核細胞の増加が臨床的発現前より認められ、免疫細胞化学染色では、CD25、CD8、CD2、CD4、HLA-DR陽性細胞が有意に増加していた。 AR治療後の尿中単核細胞数は、移植腎機能の回復とともに減少した。
2)シクロスポリンあるいはタクロリムスによる腎障害時には、尿中近位尿細管細胞の優位 性を認めた。
3)慢性拒絶反応時には、ARを伴う場合は軽度の尿中単核細胞の増加を認めた。
4)尿細胞診では血管型拒絶反応を特定することはできなかった。
【結論】 尿細胞診法は、AR、薬剤性腎障害の非観血的なモニタリング、および治療効果 を確認する方法として有用であった。ARのグレ−ド、合併複合病変を正確に診断するためには、移植腎生検が必須である。

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