血管病変の解釈に苦慮した慢性拒絶反応症例

長崎大学 医学部 第二病理
* 田口  尚、Arifa Nazneen、劉  殿閣
長崎大学 医学部 泌尿器科
錦戸 雅春、古賀 成彦、金武  洋
長崎大学 医学部 腎疾患治療部
原田 孝司

 症例は38才男性。1985年、母親(移植時47才)をドナーとして生体腎移植をうけた。以後、MP, AZP, MZによる免疫抑制療法を行なっていた。1996年、クレアチニンが2.4mg/dlと上昇し、1998年には蛋白尿が出現してきた。2000年2月にはクレアチニンが2.6mg/dlと上昇したため、腎生検を施行した。なお、これまで、シクロスポリンとタクロリムスは使用していない。
 腎生検では、糸球体の多くはtransplant glomerulopathyの像を示していた。間質は線維化や細胞浸潤を示し、尿細管の強い萎縮を伴うが、明らかな尿細管炎の像は見ない。本例は血管の変化が著明で、細動脈の硝子様変性を伴う壁肥厚が見られ、多くは全周性で、腔の狭小化を示す。小、中動脈では内膜肥厚が著明である。光顕上は糸球体のtransplant glomerulopathyを含むvascular rejectionと、間質尿細管の非特異的な反応を含む慢性拒絶と考えられた。
 本症例では細動脈病変の解釈に苦慮した。強い薬剤性の変化と考えたが、シクロスポリンやタクロリムスは使用していない。また、単に高血圧性や加齢性の変化とは考え難い。慢性の血管性拒絶の像として良いのか、シクロスポリンやタクロリムス以外の薬剤にても同様の病変を起こしうるのか、あるいは他の原因による変化なのか、ご教示頂きたい。

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