生体腎移植後3年目で糸球体主体に高度な病変を認めた慢性拒絶反応の1例

名古屋第二赤十字病院 腎臓病総合医療センター
* 武田 朝美、打田 和治、幅  俊人、冨永 芳博、片山 昭男
松岡  慎、佐藤 哲彦、後藤 憲彦、吉田 篤博、福田 道雄
大塚 康洋、上村  治、後藤 芳充
名古屋市立大学 第三内科
両角 國男、及川  理

 症例は移植時30歳の女性。62歳の実父をドナーとして生体腎移植を受けた。原疾患は慢性糸球体腎炎である。透析導入4ヶ月前に流産を経験し、移植前のダイレクトクロスマッチがフローサイトメトリー法で陽性であった。移植前処置としてDFPPを4回施行、シクロフォスファミドを併用して手術に臨んだ。移植後9日目に腎機能低下あり(best sCr=0.89mg/dl→1.47mg/dl)移植腎生検施行、急性液性拒絶反応が疑われてステロイドパルス、DFPP、スパーガリンによる治療を行い移植腎機能は回復した。抗凝固療法を併用し移植腎機能は安定しsCr=1.19mg/dl で移植後59日目に退院となった。半年目にsCr=1.19mg/dl、蛋白尿陰性の状態でプロトコル生検施行した。2年目にはsCr=1.7mg/dlであったが、その後ゆっくりと腎機能悪化した。移植後3年目にsCr=2.7mg/dlまで上昇し移植腎生検を施行した。
 組織像では特徴的な糸球体病変を呈していた。ボーマン腔周囲の線維化と係蹄のwrinklingが主体で虚血性変化の強いものと、係蹄の二重化と内皮下拡大からmesangiolysisが高度に存在するものに分かれた。後者では糸球体は腫大傾向にあり、数個の糸球体ではsegmentalに強い変化を認めて係蹄がmicro-aneurysma様に拡張し泡沫細胞や糸球体内出血を伴っていた。間質はひろく線維化が広がり尿細管萎縮、細胞浸潤をみた。血管系では、軽度のsclerosing transplant vasculopathyを呈するものも存在し、細小動脈では高度なシクロスポリン慢性血管病変を認めた。蛍光抗体法では有意な所見なく、電顕においても糸球体病変は高度であるがPTC基底膜の多層化は軽度であった。
 本例は移植前に抗ドナー抗体が陽性で移植直後の急性拒絶反応は抗拒絶治療にて乗りきった。しかし、その後大きなエピソードなくゆっくりと移植腎機能低下したものである。3年目の組織像で高度な糸球体病変主体の慢性拒絶反応と考えた。慢性拒絶反応組織像について、移植前の抗ドナー抗体陽性との関連や半年目プロトコル生検組織像からも検討してみたい。


戻 る  ページの先頭