尿中封入体陽性が持続し、腎生検にてBKポリオーマ腎症が疑われた夫婦間移植症例

名古屋第二赤十字病院 腎臓病総合医療センター
* 武田 朝美、大塚 康洋、福田 道雄、及川  理、後藤 芳充
永井 琢人、後藤 憲彦、佐藤 哲彦、松岡  慎、片山 昭男
幅  俊人、冨永 芳博、打田 和治、両角 國男

 今症例は61歳男性。慢性腎炎にて透析療法に導入され、56歳の妻をドナーとして平成14年1月16日に生体腎移植が施行された。血液型は不一致(O型→AB型)で、免疫抑制剤はタクロリムス、プレドニゾロン、MMFが使用された。一時間生検では手術時の虚血による尿細管障害を認めたが、POD6にはsCr=1.48mg/dlまで低下した。POD10から軽度sCrが上昇しパルス療法を施行しPOD12に1回目腎生検を行い、軽度のタクロリムス急性尿細管毒性と診断した。その後熱発と下痢のためMMFを中止し移植腎機能悪化した。POD27の2回目移植腎生検では急性拒絶反応(AR-G-IIA)を診断、抗拒絶治療にてsCr=1.13mg/dlまで改善した。この頃から尿中封入体細胞が認められるようになり、POD42に3回目生検を施行した。ボーダーライン変化の拒絶反応とタクロリムス尿細管毒性が混在していた。移植腎機能は安定しタクロリムス、プレドニゾロン、MMFで外来フォローとなっていたが、尿中封入体細胞陽性は持続し、sCr=1.5mg/dl程度で変化はなかった・。POD75に組織病変の確認のために4回目生検を施行したところ、尿細管上皮細胞内に封入体を認める間質性腎炎像が存在した。CMVはISHにて陰性、SV40の免疫染色は準備中であるが、BKポリオーマ腎症が疑われた。ウィルス性間質性腎炎による移植腎機能低下が注目されているが、本例では顕性の移植腎機能低下はなく障害機構を考えるうえで貴重な症例である。


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