不明熱が継続する膵腎同時移植の腎生検症例

九州大学 臨床・腫瘍外科
* 杉谷  篤、本山 健太郎、井上 重隆、岡部 安博、大田 守仁
田中 雅夫
腎疾患治療部
杉谷  篤、升谷 耕介、谷口 正智、平方 秀樹
形態機能病理
西山 憲一

 脳死下膵腎同時移植を施行した29歳女性で、術後2ヶ月目から40度の不明熱が出現し、抗結核剤を投与し経過観察中の症例を呈示する。ドナーは低酸素血症で死亡した20代女性、HLAは3Ag mismatch、感染症はなく、CMV(+)から(+)、EBV(-)から(+)であった。膵は右下腹部腹腔内に腸管ドレナージで、腎は対側腹膜外腔に移植し、総虚血時間はそれぞれ11時間8分と13時間53分であった。免疫抑制は、Tacrolimus, MMF, Steroidの3剤を用いた。0hrと1hr biopsyは軽度ATNの所見であった。移植膵、腎機能はともに良好で、6日目のIVGTTは良好な反応を示し、術後に透析、インシュリン投与は必要なかった。30日目にFBS82mg/dl, CPR2.7ng/ml, HbA1c5.1%, Cr0.72mg/dlで軽快退院した。Cr0.79mg/dl、尿量減少のため65日目腎生検を施行したが、拒絶所見はない。術後80日目に発熱が出現、次第に高熱となり、毎夕40度の弛張熱がみられた。C7-HRP陽性、胸部CTで両肺にごく微小な結節影、骨髄穿刺所見は正常、Gaシンチで移植腎に取り込みを認めたので、拒絶反応、薬剤障害、感染症、悪性腫瘍発生などを念頭におき、検査をすすめ100日目に腎生検を施行したが、軽度の細胞浸潤のみであった。ツ反陰性、Zeil-Nielsen染色で陰性であったが、診断的治療としてINH, EB, SMを投与し、1.5ヶ月経過した現在、やや解熱傾向がみられるも熱発は続いている。移植膵、腎機能は良好である。


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