Alport症候群の父からAlport症候群の娘への生体腎移植の一例

東邦大学医学部 腎臓学教室
* 酒井  謙、村松 真樹、吉沢 雄介、板橋 淑裕、岡本 昌典
荻原 秀隆、
河村  毅、新井 兼司、相川  厚、水入 苑生
小原 武博、長谷川 昭
総合太田病院
宮城 盛淳
国立佐倉病院 臨床検査科
城  謙輔

【症例】 30歳女性
【現病歴】
原病はAlport症候群で1978年(7歳時)、1988年(17歳時)の2回にわたり国立佐倉病院にて腎生検を施行している。腎機能はネフローゼ症候群を伴いながら増悪し2001年4月に透析導入をした。その後2001年11月15日に難聴と顕微鏡的血尿の既往歴をもつ父(60歳)から当院にてABO血液型不適合生体腎移植を施行した。術前はDFPPを3回、血漿交換を2回行い、免疫抑制はCiclosporine,methylprednisolone,MMFの3剤を使用し、血清Creatinine1.41mg/dlにて移植後45日目に退院した。術後6日目に急性拒絶反応を経験したが、現在までサイトメガロウイルスの難治性Viremiaを除き、順調に経過している。なお本例は移植当日の1時間生検において、電顕標本にてGBMのlamellationがあり、DonorもAlport症候群であることが判明した。現在Donorはsingle kidneyにcompatibleな腎機能(Creatinine1.0mg/dl)であり、術前より認める血尿のみ持続、蛋白尿はない。またRecipientは現在血尿、蛋白尿は認めず、抗基底膜抗体も陰性で推移している。
【考按】 本症例は(1)父娘間でのAlport症候群の自然歴の相違(2)Hereditary nephritisの腎臓が移植された後、Donorとは対照的に血尿が消失している点(3)抗基底膜抗体を生じないAlport症候群の生体腎移植Donor選択という観点から貴重な症例と考えられた。


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