慢性拒絶反応の病態に関する研究(第2報)

名古屋市立大学 第三内科
* 堀家 敬司、島野 泰暢、竹内  意、吉田 篤博、木村 玄次郎
名古屋第二赤十字病院 腎臓病総合医療センター
大塚 康洋、福田 道雄、武田 朝美、幅  俊人、打田 和治
両角 國男
すぎやま病院
及川  理

【背景】 Chronic Allograft Nephropathy(CAN)の病態は複雑で複数の異なった病態が共存することは多い。しかし治療に貢献する病理診断としては免疫学的拒絶反応の存在を的確にすることが必要である。慢性拒絶反応の病理診断基準が病態解明の結果明らかとなり、従来の光顕診断基準に加え、傍尿細管毛細血管基底膜の多層化病変(MLPTC)や、humoral factorに関するC4dの診断的価値が注目されている。
【対象と方法】
早期から出現するCRの初期病変の質的意義とCRの成立過程を明らかにするため、今回の検討では名古屋第二赤十字病院にて行われた生体腎移植後3ヶ月以上経過したもので、graft biopsyにてCANと診断された113例(1595±1161 days: mean±SD)を対象とした(原則的にepisode biopsyを検討)。光顕による診断のほか、電顕にて移植糸球体炎(TPG)およびMLPTCを観察した。PTCについては電顕にて1標本につき10個以上のPTCを観察した。C4d沈着は、CRと診断されたものに関し、凍結切片を用いて間接蛍光抗体法で検討した。
【結果】 CAN 113例中、光顕にてTPGと診断できたものは37例(33%)に対し、電顕にてTPGの初期病変が観察できたものは48例(42%)であった。光顕にてTPG陰性と診断された76例のうち、18%に相当する14例がEMにてTPGの初期病変によりCRと診断できた。さらにPTC病変を観察することにより新たに13例のCRが診断でき、最終的にCAN中の57%にCRの病理診断が可能であった。
CRと診断されたの47例中C4d-PTC陽性だったものは6.4%に相当する3例のみであった。3例とも典型的なTPGおよびMLPTCを呈していた。
【考察】 慢性拒絶反応の成因のうち頻度が高いものとして、繰り返す細胞性拒絶反応が重要であることが示された。一方、今回の検討において、液性因子が一部の例では関与していると考えられた。
電顕での糸球体病変,PTC病変を観察することで、狭義のCRの診断率を上げることができたが、必ずしも生検された時点での腎機能を反映しているとはいえなかった。しかしCRの臨床的意義は、長期予後に与える悪影響となるか、否かが問題である。TPG、MLPTCなどの診断指標の臨床的意義について今回は蛋白尿、腎機能推移を含めて報告したい。

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