移植腎巣状糸球体病変の検討

藤田保健衛生大学 腎臓内科
* 杉山  敏、浅野 慎介、富田  亮、長谷川 みどり、久志本 浩子
村上 和隆
泌尿器科
伊藤  徹、星長 清隆
社会保険中京病院 泌尿器科
絹川 常郎
小牧市民病院 泌尿器科
松浦  治

 慢性移植腎症に見られることのある巣状糸球体硬化(FGS)病変の機序について、移植腎ネフロン量低下との関連を検討した。

【対象と方法】
臨床的に慢性拒絶反応と診断され移植腎機能廃絶に至った症例を対象とし、1)高度蛋白尿を呈し、移生検にてFGS病変を持ったFGS群7例、2)高度蛋白尿を示さず、生検にてFGS病変のないCR群6例の2群とした。腎組織学的所見の経時的変化を、コンピュータ画像解析装置を使用し検討した。
【結果】 1)1時間生検(1H)の比較:平均糸球体面積(MGA)、平均間質面積(MIA)はそれぞれFGS群20.782±508μm2、24.3±3.8%、CR群24.497±2.129μm2、16.8±2.8%であり、両群間に差をみなかった。2)腎機能低下(CRF)時の比較:同程度に腎機能が低下した生検を比較した。MGA,MIAはそれぞれFGS群27.724±3.440μm2、35.2±2.5%、CR群25.510±2.749μm2、32.8±7.4%であり、両群間に差を認めなかった。3)FGS群の1HとCRF時生検の比較:MGAは変化をみなかったが、MIAはCRF時で有意に増加した(p=0.033)。4)CR群の1HとCRF時生検の比較:MGA,MIAとも変化をみなかった。5)FGS群におけるCRF時の尿蛋白量(UP)、血清クレアチニン値(S-Cr)とMGA,MIAの関連:UPはMGA,MIAいずれとも相関しなかった。S-CrはMIAと有意の相関(p=0.027)がみられたが、MGAとは相関しなかった。
【結語】 FGS病変を有し移植腎機能が低下する原因の一つとして、移植腎の総ネフロン量低下の可能性を考え検討したが、MGA,MIAについてはFGS病変をもたない群と差をみなかった。しかし、FGS病変をもつ群ではMIAの有意の増加がFGS病変をもつ群では1時間生検との比較で腎機能低下時に認められ、間質病変の進展とFGS病変との関連が示唆された。

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