移植後BK virus腎症9例の経験

大阪大学大学院医学系研究科 器官制御外科学
* 史   屹、難波 行臣、市丸 直嗣、奥山 明彦、高原 史郎
大阪大学 健康体育部健康医学第2部門
守山 敏樹
桜橋循環器クリニック
京  昌弘、常盤 俊士

【目的】  近年、BK virus腎症(以下BKV腎症)は、タクロリムス(以下TAC)の使用または、ミコフェノル酸モフェチル(以下MMF)を併用した免疫抑制方法に関連した移植腎生着率低下の原因として新たに認識されつつある。
 また、BKV腎症の確定診断は、標本組織の抗SV40抗体染色などにて確定診断を行うが、BK virus再活性化を示唆する、尿中への脱落した核内封入体を持つ尿細管上皮細胞"decoy cell"の出現を指標としたの評価方法は、確定診断法よりもscreeningとして用いるほうが良いとの報告がある。
 そこで、我々は、以前より行っているnon-episode腎生検標本またはprotocol腎生検標本を用いた病理組織診断に基づき、長期生着移植腎におけるBKV腎症発症の頻度、危険因子および尿細胞診を用いた診断率をレトロスペクティブに検討した。
【対象および方法】
 大阪大学にて施行した404例の生体腎移植のうち、non-episode腎生検(n=50)またはprotocol腎生検(n=37)をおこなった87症例、179本の組織標本を対象とした。
 生検にて得られた179本の組織標本を対象として、抗SV40抗体を用いた免疫染色を行い、BKV腎症の有無を確定診断した。(生検組織にて抗SV40抗体による免疫染色が陽性であり、かつPCR法にてBK virusを認めたものを陽性とした。)
【結果】  BKV腎症陽性群は、87症例のうち9例であった。BKV腎症陽性群9症例中decoy cellが認められたのは、3例のみであり、BKV腎症陰性群78症例のうちdecoy cellが認められたのは3例であった。
 以上の結果からは、BKV腎症の有無によりdecoy cellの発症率が異なることが判明した。(p=0.013)また、BK virus腎症陽性群は、総阻血時間との間に有意差は認めないが、一定の傾向が認められた(p=0.075)。
 その他の因子については、初期免疫療法として抗リンパ球療法の有無、ステロイドのパルス療法、性別、ドナーとレシピエント間の性別のmismatch有無、拒絶反応の程度と回数、ドナーの年齢、HLAの総mismatch数、high-levelカルシューニュリン インヒビターの有無、DSG投与の有無でも同様に有意差を認めなかった。

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