急性拒絶反応とポリオーマウイルス感染の鑑別に苦慮した生体腎移植の一例

九州大学大学院 病態機能内科学
* 升谷 耕介、藤崎 毅一郎、平方 秀樹、飯田 三雄
同 臨床・腫瘍外科学
岡部 安博、山元 啓文、本山 健太郎、杉谷  篤
原三信病院附属腎センター
片淵 律子
社会保険久留米第一病院 外科
枝国 節雄

 症例は38歳,女性.1990年(26歳)CAPD導入(原疾患IgA腎症).1995年,他院にて父親をドナーとする生体腎移植を施行.移植後の免疫抑制はシクロスポリン(CyA),ミゾリビン(MIZ),プレドニゾロン(PSL),抗ヒトリンパ球ポリクローナル抗体(ALG)を用いた.移植後57日目に急性拒絶反応(AR)を発症し,ステロイドパルス療法(SP)およびOKT3,デオキシスパーガリン(DSG)を投与し軽快した.以後血清クレアチニン(Cr)は1.0〜1.1mg/dlで経過した.1998年2月,Cr 1.5mg/dlに上昇,生検でchronic allograft nephropathy(CAN)+ARと診断し,SP,アザチオプリン(AZ)を投与しCrは1.3mg/dlに低下.1999年,移植腎の疼痛とCr上昇(2.5mg/dl)を認め,生検で再度CAN + ARと診断,SP,DSG投与を行ったがCrは低下しなかった.このときCyAをタクロリムス(FK)に変更したが,胸痛・脱力感を生じ,CyAに戻している.その後,Crは上昇し2001年3月には2.7mg/dlとなった.2001年4月に当院第一外科を初診.移植腎機能障害の精査加療目的で入院となった.生検では高度の間質細胞浸潤と高度の尿細管炎を認めた.尿細管萎縮・間質線維化も高度であった.AR grade Ib+CAN grade IIIと診断し,SPを行い,CyAをFKに変更,DSGを投与した.治療開始後10日目の再生検でも間質細胞浸潤と尿細管炎に変化はなく,Cr 7.6mg/dlに達したため血液透析を施行.以上の経過よりウイルス感染などAR以外の原因を疑い,免疫抑制をPSL単独へ減量した.以後,尿量は増加し,Crも3.9mg/dlに低下した.当院での3回目の移植腎生検でも間質細胞浸潤は高度で,尿細管炎も残存していた.尿PCR法ではJC virus陽性,BK virus陰性,血清では両ウイルス共に陰性であった.本症例では免疫抑制薬の減量により腎機能が改善したことから,移植腎へのウイルス感染の可能性が疑われた.経時的に行った移植腎生検の組織所見を含め,本症例の診断に関して御検討をお願いしたい.

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