移植後1年以降に抗ドナー抗体陽性および傍尿細管毛細血管壁へのC4d沈着を認めた7症例の臨床病理学的検討

虎の門病院 病理部
* 相田 久美
東京慈恵会医科大学柏病院 病理
山口  裕
東京女子医科大学腎センター 泌尿器科
清水 朋一
同 病理検査室
堀田  茂、古澤 美由紀

【はじめに】
傍尿細管毛細血管壁へのC4d沈着は急性期における液性拒絶反応を示唆する所見として認知されている。近年、慢性拒絶反応およびchronic allograft nephropathy(CAN)の一部において、液性因子の関与が明らかになりつつある。今回我々は移植後1年以上経過し、血清中抗ドナー抗体(ADA)および傍尿細管毛細血管壁(PTC)へのC4d沈着を認めた症例について、臨床経過および移植腎生検検体の臨床病理学的検討を行った。
【対象と方法】
2001年2月から2003年2月の間に東京女子医大腎センターにて生検された移植腎症例591例のうち、1)移植後1年以上経過、2)PTCにC4d陽性、3)血清抗ドナー抗体陽性、のクライテリアを満たす症例を対象とした。PTCへのC4d沈着の有無と程度は凍結保存材料に対する間接蛍光抗体法(IF)にて、ADA抗体価はflow cytometric crossmatch法にて行った。
【結果】 得られた症例は7例で、男性5例、女性2例で年齢は15歳から41歳(平均30歳)であり、生検は移植後454日から2458日(平均853日)に行われた。6例は血清クレアチニン上昇によるepisode biopsyで、1例はprotocol biopsyであった。7例中3例は急性拒絶反応の既往を有した。生検材料では、3例に動脈壁への炎症細胞浸潤やtransplant glomerulopathy / glomerulitis等の液性慢性拒絶反応を強く示唆する所見を認めた。残りの4例(急性拒絶の既往を有する1例を含む)では、C4d陽性、ADA陽性であるにもかかわらず、液性慢性拒絶反応を示唆する所見は認めなかった。組織学的には、それら4例では、軽度から中等度のperitubular capillaritisおよび軽度の単核球浸潤を伴う間質の線維化以外に有意な所見は見られなかった。
【考察】 PTCにC4dの沈着があり、ADA陽性であった7例中、3例では慢性反応を認めたが、その他4例では慢性拒絶反応の所見は認めず、Peritubular capillaritisのみでは、液性慢性拒絶反応の有無を判断するのは難しく、今後症例の蓄積と長期予後の解析が必要と思われた。
【結論】 ABO不一致腎移植における急性拒絶反応の発症率は、ABO不適合腎移植よりも少なく、良好であった。しかしABO不適合生体腎移植と同様に急性液性拒絶反応が多かった。また血液型の組み合わせにより急性拒絶反応の発症率に差があり、血液型の組み合わせによっては移植後留意する必要がある。

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