小児腎移植患者におけるプロトコール生検の組織学的検討
−特にFK506腎毒性について−

東京女子医科大学 腎臓小児科
* 近本 裕子、服部 元史、元吉 八重子、古江 健樹、中倉 兵庫
宮川 三平、甲能 深雪、伊藤 克己
同 腎センター 病理検査室
堀田  茂
同 泌尿器科
徳本 直彦、田辺 一成、東間  紘
東京慈恵医科大学柏病院 病理
山口  裕

【背景・目的】
近年の免疫抑制薬の進歩により急性拒絶反応は減少し移植腎生着率の短期成績は改善した。しかし移植腎の長期生着は未だ重要な課題として残されている。長期生着にはnon-immunologicalな要素が大きく影響し、高血圧、高脂血症、蛋白尿そしてカルシニューリンインヒビター(CNI)の毒性などが関与するとされている。CNIは腎移植のみならず腎疾患治療に応用されつつあり、特にシクロスポリンの腎毒性については知見が集積されつつある。一方、同じCNIであるタクロリムス(FK)の腎毒性については不明な点も多い。そこで、今回FKの腎毒性についてより明らかにする目的で、当科で経験した小児腎移植例のプロトコール腎生検材料について検討した。
【対象・方法】
FKをベースに初期免疫抑制を行った18歳未満の生体腎移植患者59 例のうち、プロトコール腎生検を実施した26例を対象とした。男女比:17/9、移植時年齢平均:11.0歳(4.3〜18.0歳)、プロトコール腎生検実施時期は移植後平均2.0年 (0.7〜4.4年)であった。免疫抑制はFK、メチルプレドニゾロンをベースとし、代謝拮 抗薬としてMz、Az、MMFのいずれかを使用した。また、FKの血中濃度は1ヶ月以内、 3ヶ月まで、4ヶ月以降をそれぞれ15〜20、10〜15、5〜10 ng/mlを目標としてコントロールし、生検時の平均血中濃度は5.8 ng/mlであった。移植腎生検は拒絶反応やCAN (chronic allograft nephropathy)の所見に加えて、FKの毒性について評価した。
【結果】 FKの毒性として、尿細管の空胞化は10/26例(38.5%)、間質縞状繊維化は15/26例(57.7%)で認めた。
【結論】 小児腎移植例においてFKの腎毒性が高率に認められたことより、特に維持期における臨床使用量には毒性に対する十分な配慮が必要と考えられた。

戻 る  ページの先頭