FSGS病変の発症とhypoxia-inducible factor (HIF)発現との関連

新潟大学医歯学総合病院 血液浄化療法部
* 西  慎一
新潟大学大学院医歯学総合研究科 腎・膠原病内科学分野(第二内科)
今井 直史、上野 光博、井口 清太郎、深瀬 幸子、森  穂波
Alchi Bassam、荒川 正昭、下条 文武
新潟大学大学院医歯学総合研究科 腎泌尿器病態学分野(泌尿器科)
斉藤 和英、高橋 公太

【研究背景】
 FSGS病変は、CANと診断される症例の一部に確認され、その発症機序には糸球体過剰濾過、動脈硬化、虚血、慢性拒絶、薬剤障害などが関与していると推測されている。
【研究目的】
 虚血あるいは低酸素により誘導されるHIFの発現をFSGS病変を有するCAN症例で検討し、虚血・低酸素とFSGS病変出現との関連を検討した。
【研究方法】
 FSGS病変を有するCAN症例7例と腎癌症例の腎癌部分と正常腎組織部分を対象とした。免疫組織化学法によりHIFの発現部位を検討した。また、形態計測によりPTC面積、PTC数、動脈硬化度を比較評価した。
【結果】  HIFは腎癌細胞に強く発現が認められた。正常腎組織では、遠位尿細管系にHIFの発現が確認されたが、FSGS+CAN例では、近位尿細管、糸球体構成細胞に新たにHIFの発現が確認された。PTCは、正常腎組織と比較して、FSGS+CAN例で単位面積当たりの総面積は有意に増加していたが、PTC血管数は有意に減少していた(p<0.05)。動脈硬化指数はFSGS+CAN例で有意に増加していた(p<0.05)。
【考察】  FSGS+CAN例においては、動脈硬化の進行、PTC血管数の減少により、腎微小循環系の障害が生じていると考えられた。これに供ない、糸球体、尿細管間質領域の虚血・低酸素状態を引きこしている可能性が示唆された。FSGS病変の形成にも、虚血・低酸素状態が関与していることが推測された。


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