C4d抗体のホルマリン固定標本における検討

藤田保健衛生大学 腎臓内科
* 川村 奈穂子、渡辺 麻子、春日井 雅美、藤井 幹子、久志本 浩子
村上 和隆、長谷川 みどり、富田  亮、比企 能之、杉山  敏

【研究背景】
 移植腎における液性拒絶反応の診断には傍尿細管毛細血管壁(PTC)へのC4d沈着の有無が有用である。現在その診断には主に凍結標本による蛍光抗体法が用いられている。過去の症例につきretrospectiveな検討をするためにはパラフィン標本による染色が必要となる。そのためホルマリン固定標本においても凍結標本と同様の結果が得られるかの検討をした。
【研究目的】
 生検組織の凍結材料を用いた間接蛍光抗体法 (IF)でPTCへのC4d沈着の有無を調べた症例について、パラフィン固定標本からも同様の所見が得られるか酵素抗体法を用いて検討した。
【対象】  凍結材料を用いた間接蛍光抗体法により、I :PTCへのC4d沈着(+)の3症例、 II :PTCへのC4d沈着(−)で糸球体へのC4d沈着(+)の2症例、 III :PTCと糸球体へのC4d沈着(−)の2症例を対象とした。
【方法】  抗ヒトC4d抗体は、凍結標本ではQUIDEL Corporatio社のmonoclonal抗体を使用した。緩衝ホルマリン固定したパラフィン切片に対する酵素抗体法には、BIOMEDICA社のpolyclonal抗体を使用した。
1)脱パラフィン後、水洗 2)内因性ペルオキシダーゼ阻止(0.3%過酸化水素水加メタノール)10分 3)PBS洗浄 4)blocking1時間 5)一次抗体(4℃over nignt) 6)PBS洗浄 7)標識二次抗体(ビオチン化抗ウサギIgG)1時間後PBS洗浄 8)LSAB反応30分後PBS洗浄、Tris洗浄 9)DAB反応10分後水洗 10)核染色(メチルグリーン染色)30分 11)脱水、封入
【結果】  I :蛍光抗体法でPTCへのC4d沈着(+)の3症例は、酵素抗体法でもPTCへのC4d沈着(+) II :PTCへのC4d沈着(−)で糸球体へのC4d沈着(+)の2症例では糸球体へのC4d沈着(+) III :PTCと糸球体へのC4d沈着(−)の2症例ではPTC、糸球体ともにC4d沈着(−)という結果であった。
【結論】  ホルマリン固定標本においても凍結標本と同様の染色結果が得られた。
 液性拒絶反応の長期生着に及ぼす影響について、過去のホルマリン固定標本を用いた検討が可能である。


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