移植腎に持ち込まれたMPGNの推移

名古屋第二赤十字病院腎臓病総合医療センター
* 武田 朝美、 小野田 浩、 堀家 敬司 、畠中 健策、後藤 憲彦
松岡  慎、片山 昭雄、幅  俊人、冨永 芳博 、打田 和治
両角 國男

 非血縁(夫婦間)生体腎移植例のドナーより持ち込まれたMPGNの推移を観察した症例を報告する。ドナーは53歳の夫で、術前検査にて、軽微な血尿を認めていた。タンパク尿や腎機能低下はなく、血圧正常であった。HC陰性で、抗核抗体陰性、低補体血症を認めていない。レシピエントは41歳の妻で、腎不全の原疾患は、MPGNと腎生検診断された慢性腎炎である。 腎移植術中腎生検にて、ドナーのMPGNが確認された。腎移植後の経過は良好で、拒絶 反応を認めていない。 移植後1ヶ月、6ヶ月にプロトコール腎生検を行った。病理診断は、光顕、蛍光抗体、電顕にて診断した。 1時間生検では、光顕にて大量の沈着物が存在し、電顕では内皮下主体、一部上皮下高電 子密度沈着物で、IgG,C1q,C3,C4が陽性であった。1ヶ月後には、光顕所見での変化は目立たなかったが、IgGは陰性化し、補体沈着は減弱していた。6ヶ月後の腎生検では、光顕にて確認される沈着物は消失し、IgMが陽性で、IgGや補体は陰性化と、持ち込み糸球体腎炎は消失していた。移植後の経過にて、レシピエントもドナーもタンパク尿はなく、腎機能も安定している。ドナーからの持ち込み糸球体腎炎はIgA腎症が大多数を占めているが、不顕性のMPGN持ち込みについて報告する。

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