持ち込みIgA沈着症が再発IgA腎症に及ぼす影響

東京女子医 第四内科
* 森山 能仁、新田 孝作、鈴木 浩一、湯村 和子、二瓶  宏
第二病理
本田 一穂
泌尿器科
田辺 一成、 東間  絋
病理検査室
堀田  茂
東京慈恵会医大柏病院 病理
山口  裕

【目的】  再発IgA腎症に関しては今まで様々な報告がなされており、およそ10〜30%の症例に再発をきたし、そのうち約20〜40%が移植腎機能途絶に陥ると報告されている。再発の危険因子としても様々なものが指摘されているが未だに一定の結論を得られていない。また、移植後経過と共に消失するとされているドナーからの「持ち込みIgA沈着症」が再発 IgA腎症に影響を及ぼすかどうかは未だ不明である。今回我々は、再発IgA腎症の予後、 危険因子を調べるとともに、「持ち込みIgA沈着症」が再発IgA腎症に及ぼす影響に関しても検討した。
【方法】  1992年から1999年までの間に、女子医大腎センターで移植時に移植腎生検を施行された510名の(446名:生体腎、64名:死体腎)の腎移植症例のうち、レシピエントの原疾患が腎生検によりIgA腎症と診断されている49症例を検討した。49例のうち27例で尿蛋白増加もしくは血清クレアチニン値(S-Cre)上昇のエピソードがあり再生検が施行され、そのうち13症例(26.5%)が再発IgA腎症と診断された。それら再発群(13例)の臨床 経過や再発の危険因子を非再発群(36例)と比較検討した。
【結果】  再発群と非再発群の二群間の比較で、観察期間、性別、移植時年齢、ドナー年齢、 生体腎移植症例数、ABO適合移植数、HLA-typing適合症例数、HLA-A2,B35,B46,DR4保持症例数、発症から腎機能廃絶までの期間、透析を施行した期間、持ち込みIgA沈着の有無、移植時のIgA値を調べた。持ち込みIgA沈着を有する症例は再発群の38.5%(5例) に対して非再発群は9.1%(3例)であり、有意に再発群で高値を示した(p=0.037)。しかし、 その他の因子は両群間で有意差は認められなかった。また、移植後の経過に関しては尿蛋 白、尿中赤血球、S-Creの推移は明らかに再発群で悪く、移植腎機能途絶に陥った症例も再 発群の5例(38.5%)に対して、非再発群は0例(0%)で明らかに再発群が悪かった(p=0.001)。 また移植腎途絶に陥った5症例のうち4症例(80.0%)が「持ち込みIgA沈着」を有する症例で有意にその予後は悪かった。
【結論】  原疾患がIgA腎症である移植患者の26.5%に再発IgA腎症が認められ、そのうち 38.5%が移植腎機能途絶に至った。従来報告されている再発IgA腎症の危険因子は今回の研究では証明されなかった。また、移植後数年で消失すると考えられる「持ち込みIgA沈着症」は今回の研究では消失が確認されない症例もあり、沈着が継続し再発IgA腎症とオー バーラップする可能性も否定できないと考えられた。また消失したとしても、再発IgA腎症と関連する可能性が高く、その予後は特に不良である可能性が示唆された。

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