複雑な病理所見を呈した献腎移植例

名古屋第二赤十字病院 腎臓病総合医療センター
* 堀家 敬司、武田 朝美、小野田 浩、畠中 健策、後藤 憲彦
松岡  慎、片山 昭男、幅  俊人、冨永 芳博、打田 和治
両角 國男


 ドナーは、交通外傷にて腎提供したアルコール性肝障害の55歳の男性。レシピエントは、 NIDDMのある透析歴15年の51歳女性。 移植術中生検にて、ドナー腎に、糖尿病性腎症に合致する細動脈病変と糸球体・尿細管病 変を認めた。腎移植後の腎機能発現は速やかであったが、術後の尿路系合併症と腎シンチにて上極の梗塞が確認されている。術後16日に膀胱尿管再吻合後、尿量増加したが、その後、尿量激減した。血管造影にて腎静脈血栓症の疑いにて、手術を行った。血栓症はなく、腎生検を行った。 高度な急性尿細管障害像を認めるのみであった。その後、腎機能は改善したが、再度の腎 機能低下にたいし、術後24日に腎生検を行った。 腎被膜下領域の糸球体荒廃が高度で、梗塞巣に続く領域では、残された糸球体構築改変が 著しく、上皮細胞の高度な変性と増加が目立った。保たれた部位にも間質の瀰漫性線維化があった。この部位の糸球体は、1時間生検と同様の病変であった。ドナーから持ち込まれた病変、腎移植後の合併症に起因する病変が部位により組み合わされた複雑な病変であった。この病変の成因についての考察を行う。

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