生体腎移植におけるBasiliximab使用症例の臨床病理学的検討

京都府立医科大学大学院 移植・再生制御外科
* 岡本 雅彦、秋岡 清一、樋口 濃史、門谷 弥生、牛込 秀隆
貝原  聡、吉村 了勇


【目的・対象】
 当施設で27例の生体腎移植症例に対し、導入時に抗CD25モノクローナル抗体Basiliximabを使用した。これらの症例につき臨床病理学的検討を中心に報告する。レシピエントの平均年齢は32±14(4−66)歳、男性16例、女性11例、すべて一次移植でABO血液型は適合であった。免疫抑制プロトコールはCsA+MMF+PSLへのBasiliximabの上乗せを基本としたが、小児の3症例ではFKベースとした。
【結果】  27例中、移植後1ヶ月以内に臨床的な急性拒絶反応を認めたものはなく、1ヶ月での平均血清クレアチニン値は1.0±0.4mg/dlと良好であった。27例中12例(44%)で移植後1ヶ月のprotocol biopsyを行ったが、いずれも急性拒絶反応、薬剤性腎毒性の所見を認めなかった。またその後2例において急性拒絶反応を発症した。一例は移植後350日目に免疫抑制剤の服用中断により血清Crは6.6mg/dlまで上昇、Banff分類IIbで血液透析も要したがステロイドパルスにより寛解し、その後血清はCr1.5mg/dlまで低下した。他の一例は71日目にステロイドオフし、95日目に血清Cr3mg/dlまで上昇、ステロイドパルスにより寛解し血清Crは1.1mg/dlまで低下した。腎生検では拒絶反応の所見は乏しかった。また末梢血中リンパ球サブセットの解析によりシムレクト投与症例ではCD25陽性細胞が術後5週まで完全に抑制されていた。
【結語】  Basiliximab併用免疫抑制療法は安全かつ有効な免疫抑制療法で、カルシニューリンインヒビターの減量により腎毒性の所見も軽減された。しかし、CD25の抑制が取れた後には拒絶反応が発生する可能性があり、慎重に経過観察をする必要があると考えられた。


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