当センターにおける腎移植標本作製の現状と問題点

東京女子医大腎臓病総合医療センター 病理検査室
* 堀田  茂
東京慈恵会医科大学柏病院 病理部
山口  裕
東京女子医大腎臓病総合医療センター 泌尿器科
田辺 一成、東間  紘

 腎移植は末期腎不全の治療法として確立しているが、術後の患者管理が予後や生着率に大きく影響する。移植腎生検の診断では、拒絶反応、薬剤性腎障害、腎炎および感染症などとの鑑別が必要であり、精度とともに迅速性が要求される。診断結果により治療が異なるからでる。
我々の施設では、2003年に126例の腎移植(生体腎移植110例、死体腎移植16例)が行われ、年間の総生検数が474例(0hr生検124例、エピソード生検とプロトコール生検が350例)であり、その中で迅速標本作製は120例であった。急速な腎機能低下の原因検索のため迅速標本を作製し、HE,PASおよびMasson染色で病態を迅速診断している。しかし、迅速標本診断では移植腎の複雑な病態の組織学的鑑別は容易でなく、細かな所見を見落とす恐れがあり、パラフィン標本で診断することが望ましい。パラフィン標本から連続切片を作製し、HE,PAS, MassonおよびPAM染色を試行し、病理医により確定診断していただいている。また、パラフィン標本作製までの間に、凍結切片を用いて免疫グロブリンや補体成分あるいはC4dやHLA-DRの沈着の有無を確認している。
当施設での移植腎生検標本作製のため、凍結切片を用いた迅速標本では1時間前後、パラフィン標本では24時間以内を目指している。しかし、パラフィン標本の作製には時間の制約がある。今回我々は、パラフィン標本作製までの時間を短縮するため、超迅速マイクロウエーブティシュープロセッサー(FINETEC社)を使用する機会を得たので簡単に紹介する。

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