迅速生検結果によって移植を決断した死戦期無尿状態の献腎移植の1例

九州大学病院 腎疾患治療部
* 杉谷  篤、升谷 耕介、平方 秀樹
原三信病院 腎センター
片渕 律子
九州大学 臨床腫瘍外科
本山 健太郎、山元 啓文、大田 守仁、吉田 淳一、江上 拓哉
田中 雅夫

 心停止下献腎提供でMarginal donorの場合、腎臓を摘出・移植するかの判断に苦慮する場合が多い。ドナーは57歳男性、死因は小脳出血。収縮期血圧40mmHg、DOA20g、無尿状態が40時間経過していた。救急病院搬送時の血清Crは0.6mg/dlであったが、摘出直前は6.9mg/dlであった。In situ cannulation、ヘパリン加ののち30分後に心停止となった。温阻血3分、UW液1Lで潅流し、摘出時間11分であった。潅流状態は中等度で、動脈硬化、背側に点状出血を認めた。他施設は移植を辞退、当科の患者2名が候補に残った。2腎の迅速病理結果で微小血管に血栓がなく、糸球体も19/20が正常という所見に基づき移植を決断した。現在、2つの移植腎はグラフト内DICの所見もなく、ドップラー超音波でみる拡張期血流は漸増し、透析を継続しながらATNからの回復を待っている。迅速標本、protocol biopsyを供覧し、献腎移植における移植腎病理の意義を考えたい。

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