ABO血液型不適合腎移植における血管内皮細胞障害の検討

名古屋第二赤十字病院 腎臓病総合医療センター
* 武田 朝美、前田 佳哉輔、坂井  薫、 小野田 浩、 堀家 敬司
及川  理、永井 琢人、後藤 芳充、
宇野 暢晃、後藤 憲彦
佐藤 哲彦、松岡  慎、片山 昭男、幅  俊人、冨永 芳博
打田 和治、
両角 國男

【目的】 ABO血液型不適合腎移植では、明らかな液性拒絶反応を病理組織学的に認めない場合にも液性拒絶反応のマーカーとされるPTCへのC4d沈着が陽性となる。これはsubclinicalな液性拒絶反応によるものであろうか?PTC-C4d沈着の意義を解明するため血管内皮細胞障害との関係を検討した。
【対象と方法】
ABO血液型不適合腎移植10例において1時間生検、エピソード生検、プロトコル生検の44検体(移植後0日から414日)で、光顕組織所見に加えて蛍光抗体法でのC4d染色を行い、血管内皮細胞障害の程度は免疫組織化学的に内皮細胞マーカーであるPECAM-1(CD31)を使用してsemi-quantitativeに評価した。
【結果】 1時間生検では10例中8例でPTCでのCD31染色性が低下していた。その8例中1例ではPTCと糸球体内皮ともに染色性が低下していた。全例において移植後12日目以降の生検組織ではCD31はPTC、糸球体、動脈内膜ともに同様な染色性を保っていた。PTC-C4dは1時間生検では3例のみ軽度陽性だったが、それ以降では全例強陽性を認めた。1例で移植後20日目に光顕組織上軽度の液性拒絶反応像を認めた。
【結論】 ABO不適合腎移植では移植後1時間の時点ですでに血管内皮細胞障害を認めPTCに最も起こりやすい。PTC-C4d陽性からでは抗体関連型拒絶反応の有無を判断することは困難である。


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