治療目的で腎移植し、早期にsilent lupus nephritisを認めたSLEの一症例

三井記念病院 病理部
* 藤井 晶子
東京女子医科大学 第4内科
湯村 和子、板橋 美津代
東京女子医科大学 腎臓外科
寺岡  慧、渕之上 昌平
東京慈恵会医科大学附属柏病院 病理部
山口  裕

症例 28歳 女性
 9歳時に蝶型紅斑、関節痛出現。SLEと診断された。蛋白尿を指摘され腎生検施行し、びまん性ループス腎炎の診断であった。エンドキサンパルス大量静注射療法などを行い蛋白尿は陰性化した。18歳時に抗核抗体の上昇、低補体血症を認めた。尿蛋白、血尿出現し、ネフローゼ症候群に対してステロイドパルス療法などを行うも腎機能は急速に悪化した。19歳時に血液透析を導入されたがエンドキサンパルス療法を併用して透析離脱した。27歳時に血清クレアチニン値が上昇、SLEの免疫学的活動性の上昇あり。入院加療するも血清クレアチニン値は低下せず。28歳時にセカンドオピニオンを求めて当院に来院。SLEの免疫学的活動性はステロイドパルス療法、経口ステロイド薬の増量でも改善せず。前病院から引き続きの長期入院となり自己退院。約1月後、感冒症状とともに下痢、嘔吐出現 。倦怠感、息切れ、眼瞼浮腫あり。体重増加、代謝性アシドーシスと心肥大を認めた。血清クレアチニン値7.7g/dLに上昇しており緊急透析実施。免疫学的活動性ありステロイドパルス療法を実施。その後、本人が父親をドナーとして腎移植を希望。抗核抗体、抗ds-DNA抗体の上昇、低補体血漿が著明であったため、血液透析、ステロイドパルス療法、血漿交換、免疫吸着療法によってSLEの免疫学的活動性を安定化した後、腎移植を施行した。その後SLEの免疫活動性の再上昇あり。
 移植後約2週間で行われた退院時プロトコール腎生検では、尿所見が陰性にもかかわらず、WHO分類でIIIA型に相当するループス腎炎の組織像を示し、蛍光免疫染色で多彩な免疫グロブリンや補体系の沈着を認めた。移植後早期にlupus nephritisの像を呈した稀なSLEの移植腎症例であるためここに提示する。

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