鏡視下摘出ドナー腎における移植後の腎被膜下障害についての病理組織学的検討

東京女子医科大学 泌尿器科
* 清水 朋一、角山 邦子、宮本 直志、徳本 直彦、石田 英樹
田邉 一成、 東間  紘
東京慈恵会医科大学附属柏病院 病理部
山口  裕

 以前の本研究会にて、鏡視下摘出ドナー腎(LDNK)の0 hour biopsyにおける腎被膜下実質障害としてのSupcapular cortical damage(SCCD)について報告した。
 最近、移植後の移植腎生検にて、SCCDとCLの継続を認めたり、瘢痕形成など不可逆的な病理組織学的変化を認める症例が時々見受けられた。そのため今回LDNKの移植後の腎被膜下障害について病理組織学的に検討した。
【対処と方法】
2000年7月より2004年9月までに東京女子医大において鏡視下ドナー腎摘出術(LDN)を250症例に対して施行した。LDN250例のうち105例のLDNKの0 hour biopsyにて病理組織学的にSCCDが認められた。この105例の移植後に行われた移植腎生検のうち2004年10月までに施行された276検体を対象とした。
【結果】 105例のレシピエントの移植腎生検276検体のうち、87例の256検体にはSCCDは認められなかった。18例(17%)のレシピエントの移植腎生検20検体においてSCCDに起因すると思われた組織障害を認めた。その20検体の移植腎生検時期は移植後平均62.7日であった。SCCDの持続は10検体に認め、移植後5日から17日の移植後早期に生検されたものであった。その他の10検体においては、病理組織学的に被膜下組織の間質の拡大と線維化、尿細管委縮と尿細管上皮の変性・再生、糸球体の球状硬化、二次的な単核球浸潤などSCCDの結果生じた組織障害を認めた。この10検体は移植後11日から441日までの比較的移植後後期の検体に認めた。
【結論】 LDNKの移植後の腎被膜下実質障害は、レシピエント250例中18例(7.2%)に認めた。腎被膜下実質障害の病理組織学的所見としては、主として移植後14日以内の移植腎生検に認めるLDNKの初期の腎被膜下実質障害であるSCCDの継続の所見と、移植後14日以降の移植腎生検に認められたSCCDの結果生じた被膜下組織の間質の拡大と線維化を主とする瘢痕形成であった。


(PDF 151KB)

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